施工事例

【詳細調査】高齢者施設で原因不明のカビが再発。施工方針の決定に必要な科学的根拠を示したカビ調査事例

【詳細調査】高齢者施設で原因不明のカビが再発。施工方針の決定に必要な科学的根拠を示したカビ調査事例

案件情報

住所
神奈川県藤沢市
物件用途
福祉施設
作業内容
カビ汚染度詳細調査
作業人数
調査1名
作業時間
約3時間
作業面積
作業費
税込217,800円

事例の概要

神奈川県藤沢市の高齢者施設で、原因不明のカビが再発し施工方針を決められずにいた状況を、科学的調査によって解決し、適切な対策への道筋をつけた調査事例です。

課題

  1. カビの原因が不明で、施設側に説明できる根拠がなかった
  2. 壁紙を交換しても再発し、下地まで施工すべきか判断できなかった
  3. 建物の不具合か、結露等の環境要因かの切り分けができなかった

成果

  1. カビの原因候補が示され、施設側に説明できる材料が揃った
  2. 壁紙裏でのカビ定着が指摘され、下地処理の必要性が明確になった
  3. 漏水が主因でないと数値で確認でき、大規模補修を回避できた

抱えていた課題/依頼の背景

今回ご相談いただいたのは、建物の修繕や施工を担う工務店様(以下、同社)でした。担当されていた高齢者施設の特定の居室でカビが発生し、その対応に苦慮されている状況です。

過去に壁紙を交換してもカビが再発してしまうため、表面的な処置だけでは解決しないことは明らかでした。しかし、「なぜこの部屋だけカビが発生するのか」という根本的な原因が分からず、施設側に状況を説明するための根拠も、今後の適切な施工方針も立てられずにいらっしゃいました。特に、雨漏りや配管からの漏水といった建物側の不具合なのか、あるいは断熱不足や結露といった環境の問題なのか、原因の切り分けができず、次の一手を決めかねていたそうです。

免疫力の低いご高齢の入居者様への影響も懸念されるため、清掃や除カビ施工ありきではなく、まずは専門家による客観的な調査が必要だと判断され、弊社にご相談をいただきました。

今回案件のポイント

本件の成否を分けたポイントは、工務店様が施工方針を具体的に決定できるよう、カビ発生の原因を科学的な根拠に基づいて切り分けることにありました。

雨漏りや配管漏水が原因であれば大規模な補修工事が必要になりますが、結露が原因であれば対策はまったく異なります。また、カビが壁紙の表面だけの問題か、その下の石膏ボードなど下地にまで及んでいるかによっても、張り替えの方法は大きく変わります。この切り分けが、次の行動を決めるための絶対条件でした。

今回の調査では、まず壁や天井の含水率を測定し、数値がいずれも低いことから、継続的な漏水が主因ではないと判断しました。そのうえで、「普段は乾いているのになぜカビが発生するのか」という最大の疑問に対し、エアコンの冷風が壁面に当たることで生じる、一時的・反復的な表面結露が原因である可能性を提示しています。

さらに、壁紙や石膏ボード表面の汚染度は、測定の結果、顕著な状態ではありませんでした。この事実から、カビは壁紙と石膏ボードの境目、つまり壁紙の裏側で定着している可能性が高いと考察。これは、単なる表面の清掃や壁紙の張り替えだけでは不十分であり、下地からの処置が必要であることを示す重要な根拠となりました。

依頼から診断完了までの流れ

ご依頼をいただいてから診断完了までの主な流れは、以下のとおりです。

  1. 現地調査
    建物の修繕・施工を担当されている工務店様立ち会いのもと、対象の居室およびその周辺の状況を確認しました。浮遊しているカビ菌の量を測る検査や、壁に付着しているカビの確認、汚れの度合いを示すATP測定、壁や天井の水分量を調べる含水率検査などを体系的に実施しました。
  2. 浮遊菌検査
    専用の測定器(エアーサンプラー)を用いて室内の空気を吸引し、空気中に漂うカビ菌の数を測定しました。結果は、明確な汚染を示すレベルではありませんでしたが、周辺の空間よりは相対的に高い数値であり、準汚染レベルにあると整理しました。
  3. 菌種の確認
    検出されたカビの種類を確認したところ、高湿度の環境で繁殖しやすいアスペルギルス属やペニシリウム属が確認されました。浮遊菌の数自体は多くないものの、ご高齢の方が入居されている施設であることをふまえ、早期の対策が望ましい状態であると評価しました。
  4. 含水率検査
    壁、天井、トイレ周辺など、カビが見られる箇所の水分量を測定しました。いずれの箇所も水分量は低く、雨漏りや配管からの水漏れ、あるいは継続的に湿っている状態がカビの主な原因ではないと判断しました。
  5. ATPルミテスター測定・表面状態の確認
    壁紙や石膏ボードの表面の汚れ具合を数値で測定しました。その結果、汚染度は顕著な状態ではないことが判明。このことから、カビは表面ではなく、壁紙と下地である石膏ボードの間(壁紙の裏側)で定着している可能性が高いと考察しました。
  6. 報告書の作成・原因の考察
    調査から約2週間後、測定データと現地の状況をまとめた報告書を提出しました。主な原因として、エアコンの冷たい風が特定の壁に当たり続けることで、表面に一時的な結露が繰り返された可能性を指摘。継続的な漏水ではなく、夏場などに発生する一時的な水分付着が引き金になったという見解をお伝えしました。
  7. 今後の施工方針の提示
    調査結果に基づき、単に壁紙を張り替えるのではなく、「壁紙の撤去」「下地ボードの除菌」「十分な乾燥」「防カビ処理」を経てから新しい壁紙を施工するという、再発を防ぐための具体的な手順を提示しました。
  8. 他室に関する所見
    同じ仕様の他の部屋にも同様のリスクは考えられるものの、今回は当該室固有のエアコン設定や家具の配置などが複合的に影響した可能性が高いと整理しました。全室を一律に施工するのではなく、まずは条件が似ている部屋から優先的に点検するという、段階的な対応が可能になるような情報を提供しています。

得られた結果

雨漏りや配管漏水がカビの主因ではないことが数値で確認され、大規模な建物補修の必要性を検討対象から外すことができました。

エアコンの冷風による表面結露という原因候補が示されたことで、「なぜこの部屋だけ発生したのか」を施設側に説明できる材料が整いました。また、壁紙の裏側でカビが定着している可能性が指摘されたことで、表面的な張り替えのみでは再発しうることも明確になっています。

壁紙の撤去から下地の防カビ処理まで含めた具体的な施工手順が示され、工務店様が自信を持って施工方針を決定できる状態となりました。施工面と運用面の両面から対策が提示されたことで、施設側へ状況を包括的に説明するための資料も揃っています。

今回案件で発揮できたハーツリッチの強み

1:漏水か結露か、原因を科学的に切り分け施工方針を明確化

工務店様にとって、カビの原因が雨漏りなど建物側の構造的な不具合なのか、それとも室内の環境に起因する結露なのかを判断することは、喫緊の課題でした。もし大規模な漏水補修が必要となれば、費用も工期も大きく変わってきます。

弊社では、まず建材の含水率を専用の機器で測定しました。数値が低いことを確認し、継続的な漏水が主因である可能性を、客観的なデータで否定しています。

これにより、工務店様は大規模な補修工事ではなく、結露対策や内装の処置に焦点を当てて計画を進められるようになりました。原因の選択肢を的確に絞り込むことで、不確定要素に悩むことなく、次の具体的な一歩を踏み出すための道筋を明確にできたのです。

2:表面だけの処置リスクを提示し、下地からの根本対策を提案

壁紙を張り替えてもカビが再発するという事実は、問題が表面だけではない可能性を示唆していました。しかし、目に見えない壁の内部まで処置すべきかどうかの判断は、確かな根拠がなければ下せません。

私たちは、壁紙や石膏ボード表面の汚染度を測定し、数値が顕著に高くないことを確認しました。この結果は、カビが壁紙の裏側で定着している可能性を強く裏付けるものです。

この「壁紙裏での定着」という見解をお伝えしたことで、表面的な処置だけでは再発リスクが高いことが明確になりました。壁紙を剥がした後の下地の除菌、乾燥、防カビ処理という根本的な対策の必要性にご納得いただき、再発を防ぐための具体的な施工手順を固めることができました。

3:施工と運用の両面から対策を提示し、施設のリスク管理に貢献

カビの再発防止は、施工だけで完結する問題ではありません。特に今回の原因として考えられた「表面結露」は、施設の日常的な運用方法とも密接に関係しています。

そこで私たちは、再発防止のための施工手順をお示しするだけでなく、エアコンの設定温度や風向き、家具の配置といった運用面での改善点も併せてご提案しました。

さらに、他の部屋についても闇雲に不安を煽るのではなく、当該室固有の条件が複合的に作用した可能性が高いと分析。全室一律の対応ではなく、優先順位をつけて点検するという、現実的なリスク管理の進め方を提示しました。これにより、工務店様は施設側に対し、施工と運用の両面からなる包括的で説得力のある改善策を提案できる状態が整いました。

代表 穂苅からのコメント

今回の調査で最も重要だったのは、「普段は乾いているのになぜカビるのか」という現場の疑問に、科学的な根拠でお答えすることでした。これは、単にカビを拭き取るだけの視点では見えてこない、建物の構造や空調設備まで理解した調査力があって初めて可能になります。工務店様が抱えていた不安を解消し、自信を持って施設様へのご提案に臨める、その確かな道筋をお示しできたことを大変嬉しく思います。

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