事例の概要
千葉県柏市の一戸建て住宅で、製品不良を原因とするカビの対応範囲が不明瞭だった状況を、客観的な調査設計で解明し、施主様への説明責任と適切な部材交換の判断を両立させた調査事例です。
課題
- 製品不良が原因のカビに対し、メーカーとしての対応範囲を決められなかった
- 施主様の不安に対し、メーカー自身の判断では客観的な説明が難しかった
- キッチン全体の交換といった過剰対応は避け、必要な箇所だけ交換したかった
成果
- 客観的データにより、対応範囲を製品周辺に限定できる判断材料を得た
- 第三者の検査結果により、施主様へ根拠ある説明ができる状態になった
- キッチン全体の交換を回避し、影響範囲に絞った対応を検討できた
抱えていた課題/依頼の背景

今回ご相談いただいたのは、住宅設備メーカー様(以下、同社)です。個人宅に納品したシステムキッチンで製造不良が起こり、天板の縁が剥がれた部分の裏側にカビが発生してしまいました。
製品不良が起点となっているため、メーカーとしてどこまで対応すべきかを判断する必要がありましたが、交換範囲を決めるための客観的な情報が不足していました。カビが天板裏だけに留まっているのか、胞子が室内に飛散していないかなど、影響範囲が不透明だったのです。
また、お住まいの施主様が抱える「カビは家に広がっていないか」「家族への影響はないか」といったご不安に対し、作り手である同社が「問題ありません」と説明しても、自己判断と受け取られかねない懸念がありました。
一方で、過剰な対応となるキッチン全体の交換は避けたいという方針もお持ちでした。そのため、第三者の専門家による客観的な調査結果を根拠に、施主様へ誠実な説明を行い、かつ影響範囲に絞った適切な対応を進めたいとお考えになり、弊社にご相談いただくことになりました。
今回案件のポイント
本件の成否を分けたポイントは、カビの有無をただ確認するのではなく、「メーカーとしてどこまでの対応が妥当か」を判断できる客観的な材料を提供することにありました。
そのためには、天板裏という「局所的な問題」と、室内空気への飛散という「室内全体の問題」を明確に分離して評価する必要がありました。もしカビ胞子が室内全体に飛散していれば、部材交換だけでは対応が不十分となります。逆に飛散が確認されなければ、対応範囲を製品周辺に限定できるという、判断の拠り所となるのです。
また、含水率の測定も重要な意味を持ちます。製品内部に今も水分が供給され続けている状態であれば、たとえ部材を交換しても、同じ問題が再発するリスクがあるためです。今回の調査で含水率が正常範囲であることを確認できたことは、再発リスクを判断するうえで重要な情報となりました。
依頼から診断完了までの流れ

ご依頼をいただいてから診断完了までの主な流れは、以下のとおりです。
- 現地調査
菌数調査およびカビ発生原因の調査を目的として実施しました。1階のLDK・キッチン周辺を中心に、リビングやダイニング、階段下など複数地点で検査を行いました。 - 浮遊菌検査
室内に浮遊しているカビの胞子数を測定しました。結果は1階各地点で0〜4CFU/100L程度と、専門機関(日本建築学会)がカビ汚染の目安とする100CFU/100Lを大幅に下回る数値でした。このことから、室内全体にカビが広く飛散している状態ではないと評価しています。 - 付着カビ検査
壁や床などに付着しているカビを、寒天培地という専用の資材で採取し、培養して種類を特定しました。その結果、比較的乾燥に強い性質を持つアスペルギルス属を確認。明確な水漏れなどがなくても、換気不足や軽度の湿気で繁殖しうるカビであることを報告書に記載しました。 - 含水率測定
専用の機器を用いて、キッチン周辺の建材が含む水分量を測定しました。含水率は0.7〜1.0%程度で正常範囲内であり、継続的な漏水や異常な湿気は見られないことを確認しました。 - 報告書の作成・提出
現地調査から約2週間後、各種検査結果をまとめた報告書をご提出しました。空気中の状態、付着菌の状況、含水率をそれぞれ整理し、「室内全体の問題」と「局所的な問題」を切り分けた形で報告することで、同社が次の対応を判断しやすいように構成しています。
得られた結果

室内空気への飛散が基準値以下であると確認でき、対応範囲を製品周辺に限定してよいという判断材料が整いました。
含水率が正常範囲であったことから、継続的な水分供給による再発リスクが低い可能性を示せました。また、付着菌が確認されたことで、局所的なカビの除去と該当部材の交換という対応方針を明確にできています。
第三者による客観的な検査結果を書面で提示できたことで、施主様へ「なぜこの範囲の対応で十分なのか」を根拠をもって説明できる状態を確保しました。結果として、キッチン全体の交換といった過剰対応を避け、影響が確認された部材に絞った合理的な対応を検討することが可能になりました。
今回案件で発揮できたハーツリッチの強み
1:局所と全体を切り分ける調査で、対応範囲の判断根拠を明確化
製品不良を起点とするカビの発生に際し、メーカー様は「どこまで対応すべきか」という判断の拠り所を求めていらっしゃいました。
そこで弊社は、単にカビの有無を調べるだけでなく、その影響範囲を立体的に捉える調査を設計しました。室内の「浮遊菌検査」とキッチン周辺の「含水率測定」を組み合わせ、天板裏という「局所的な問題」と、室内空気への飛散という「全体の問題」を切り分けて評価するアプローチです。
その結果、空気中への広がりは基準値を大きく下回り、水分供給も継続していないことがデータで示されました。これにより、対応範囲を製品周辺に限定できるという、客観的な根拠を提供することができました。
2:第三者の客観的報告書で、施主様への誠実な説明を可能に
メーカー様ご自身の判断で「問題ない」と説明しても、施主様からは作り手側の都合と受け取られる可能性があります。双方の関係性を良好に保ちながら問題解決へ導くには、誰もが納得できる客観的な事実が必要でした。
弊社の報告書では、浮遊カビ数を公的な機関(日本建築学会)が示す目安と比較し、「何と比べて、どの水準なのか」を明示しました。また、付着菌としてアスペルギルス属が確認された事実も伏せずに記載し、「問題ゼロ」という楽観的な結論ではなく、局所的な対応が必要であることの根拠としています。
これにより、メーカー様は根拠のない楽観論にも過剰対応にも寄らない、誠実な説明を施主様に行うための資料を手にすることができました。
3:目的に合わせた調査範囲の設計で、過剰なコスト発生を抑制
今回の調査目的は、あくまで「メーカーとして適切な交換範囲を判断すること」でした。やみくもに検査箇所を増やせば、調査費用は膨らんでしまいます。
弊社では、この目的に対して最も費用対効果の高い調査範囲を検討し、判断に必要な材料を得るために、基本となる10検体で調査を設計しました。
その結果、過剰な調査費用をかけることなく、メーカー様が求める判断材料を的確に提供できました。これも、数多くの調査実績から「どこを調べれば本質が見えるか」を熟知している弊社の強みです。
代表 穂苅からのコメント
今回の案件で最も重要だったのは、カビの有無そのものではなく、メーカー様の「責任範囲」を客観的なデータで示すことでした。
企業と個人のお客様との間で感情的になりがちな問題を、科学的な事実に基づいて整理していく。それが、私たちの持つ豊富なデータと、状況を多角的に分析する調査設計力によって可能になったのだと思います。
双方がご納得いただける着地点を見出し、問題解決への道筋をつけられたことに、専門家として大きなやりがいを感じました。
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ハーツリッチは、科学的根拠に基づく原因調査と根本解決を強みとするカビ対策の総合専門会社です。
本事例でお伝えしてきたとおり、製品不良などを起点としたカビ発生時の責任範囲の特定や、顧客への説明でお悩みの方は、ハーツリッチで解決できる可能性が高いです。
無料調査や概算のお見積り、詳細な有料調査のご希望、その他のご相談・ご質問がある方は、お気軽にお問い合わせください。


今回の案件で最も重要だったのは、カビの有無そのものではなく、メーカー様の「責任範囲」を客観的なデータで示すことでした。