施工事例

【詳細調査・施工】原因不明のカビに悩む宿泊施設が複合要因を特定し、壁紙貼り替え前に再発防止の道筋を立てた事例

Before image
Before
After image
After

案件情報

住所
長崎県佐世保市
物件用途
宿泊施設
作業内容
カビ発生原因の調査・除カビ防カビ施工・施工後菌数確認
作業人数
調査2名/施工2名
作業時間
調査:約2時間/施工:2日間
作業面積
作業費
調査 税込316,800円/施工 税込561,990円

事例の概要

長崎県佐世保市のホテルで、複数客室で発生した原因不明のカビに対し、科学的調査で複合要因を特定し、優先度の高い12室の施工を完了させて再発防止への道筋を確保した事例です。

課題

  1. 部屋ごとにカビの発生状況が異なり、原因が特定できなかった
  2. 清掃や部分的な確認では、根本的な解決に至っていなかった
  3. 壁紙貼り替え前に原因を突き止め、再発を防ぐ必要があった

成果

  1. 部屋ごとの発生状況の違いが、複合要因として合理的に説明された
  2. 漏水ではなく結露が起点と判明し、対策の方向性が定まった
  3. 優先度の高い12室の施工を完了し、菌数を基準値以下にした

抱えていた課題/依頼の背景

今回ご相談いただいたのは、複数棟からなる宿泊施設を運営する会社様(以下、同社)です。客室の壁紙裏に縦方向のシミのようなカビが発生し、ヘッドボードも黒ずむなど、複数の客室でカビの問題に直面されていました。

特に深刻だったのは、部屋ごとに発生状況が大きく異なっていた点です。壁紙裏に広範囲でカビが見られる部屋がある一方で、その隣室はまったくきれいな状態というケースもあり、単純な清掃や一律の対策では解決できない複雑な状況でした。

同社では、すでに換気扇やダクトの施工不良を疑って確認を進め、複数の外部専門家にも意見を求めていたそうですが、決定的な原因究明には至っていなかったといいます。求めていらっしゃったのは、目に見えるカビを取り除くことではなく、「壁紙を貼り替えた後、数年してまたカビが出ない状態にすること」。そのためには、経験則による判断ではなく、科学的な根拠に基づいた原因の特定が不可欠だとお考えになり、弊社にご依頼をいただきました。

今回案件のポイント

本件の成否を分けたポイントは、同じ建物でありながら、部屋ごとにカビの発生状況が大きく異なる理由を合理的に説明することにありました。隣り合う客室で一方がひどく、もう一方がきれいという状態は、建物全体に共通する単一の要因だけでは説明がつかないからです。

そこで弊社は、浮遊菌の数、壁の含水率、天井裏の構造、空調の条件などを部屋ごとに個別に確認し、どの条件がどこで重なり合ったのかを整理する方針としました。調査の結果、壁の含水率はいずれも低く、現在進行中の漏水が直接の原因ではないことが判明。過去または特定の条件下での高湿度や結露が、起点となっている可能性が浮かび上がりました。

最終的に、高温・高湿の外気が建物内や天井裏へ流入し、金属部材などとの温度差によって結露が発生した可能性を主因として整理しました。外気の流入、温湿度の差、結露、断熱、気密、換気といった、設備と建築環境における複合的な要因としてご説明しています。これにより、除カビ施工だけでは根本解決にならないことも明確になり、設備側の改善を含めた段階的な対策をご提案するに至りました。

依頼から診断/施工完了までの流れ

ご依頼をいただいてから診断、施工完了までの主な流れは以下のとおりです。

診断の実施

  1. 現地確認と採取地点の決定
    発生状況にばらつきがある案件であったため、事前に調査地点を固定せず、現地を拝見したうえで比較検討に最適な地点を選定しました。客室や共用部など、合計9箇所で検体を採取しています。
  2. 浮遊菌検査
    専用の機器を用いて、空気中のカビ胞子量を測定しました。明確な汚染区域には至っていませんでしたが、複数箇所で注意が必要な準汚染区域に相当する数値を確認しました。
  3. 含水率測定
    壁内部の水分量を測定したところ、継続的な漏水や著しい湿潤状態は見られませんでした。これにより、現在進行中の水漏れが直接原因ではなく、過去の結露などが起点であると考察しました。
  4. 天井裏・点検口裏の確認
    ユニットバスの点検口裏や廊下の天井裏を直接確認したところ、軽量鉄骨の下部などに、結露が原因と考えられるカビの発生が見受けられました。
  5. 報告書の作成・原因の考察
    各種調査結果を統合し、高温多湿の外気が建材との温度差で結露を引き起こした可能性を主因とする報告書を作成しました。外気流入、温湿度差、結露、断熱、気密、換気といった複合的な要因として整理しています。
  6. 対策方針の提示
    除カビ施工のみでは根本解決にならないことを明確にお伝えしたうえで、空調機の見直しや断熱・気密性の確認など、設備面も含めた段階的な対策をご提案しました。

施工の実施

  1. 除カビ・防カビ施工
    ご提案した対策のなかから、まずは優先度の高い箇所として、客室12室のバスルーム点検口裏を対象に施工を実施しました。専用の除カビ剤と抗菌剤を使用し、丁寧に処置を行っています。
  2. 施工上の制約の事前説明
    天井裏の構造上、物理的に薬剤が届かない箇所が発生する可能性があることを、お見積りの段階で正直にお伝えし、ご納得いただいたうえで作業を進めました。
  3. 施工後の菌数確認
    施工完了後、各部屋でATP測定(菌の残存量を測る検査)を実施しました。菌が基準値以下に減少したことを数値で確認し、施工前後の写真と合わせてご報告しています。

得られた結果

部屋ごと・棟ごとに発生状況が異なる理由を、複合要因として整理できました。継続的な漏水ではなく、結露を起点とする対策へと方向性が明確になっています。

壁紙貼り替え前に原因と対策の優先順位が定まったことで、再発リスクを回避する判断材料が整いました。優先度の高い12室の除カビ・防カビ施工と、施工後の菌数確認までを完了しています。

さらに、設備側の改善も含む、根本解決に向けた段階的な計画が位置づけられました。

▼施工前後の比較(Before / After)

施工前後の変化が分かるよう、Before / Afterの写真をご覧ください。

今回案件で発揮できたハーツリッチの強み

1:複合的な要因分析で、部屋ごとに異なるカビ発生の謎を解明

複数の専門家に相談しても、隣室でさえ状況が異なるカビ発生の原因は不明なままでした。

弊社は単一の原因に固執せず、外気流入、温湿度差、結露、断熱といった複数の要因を科学的に調査しました。特に、壁の含水率を測定することで進行中の漏水の可能性を排除し、結露が起点であると特定したことが大きなポイントでした。

部屋ごとの違いを「条件の重なり方の違い」としてご説明したことで、長年抱えてこられた疑問が解消され、ご担当者様も深くご納得されたご様子でした。根本原因の方向性が定まり、次の具体的な対策へと進むことができました。

2:施工の受注を優先せず、根本解決に向けた段階的な対策を提示

ご依頼者様の真の目的は、目先のカビを除去することではなく、「壁紙貼り替え後の再発防止」にありました。

そこで弊社は、除カビ施工だけでは根本的な解決にはならないことを明確にお伝えしました。そのうえで、外気処理空調機の検討や断熱性の確認といった設備側の改善策を提示。全室一律ではなく、影響の大きい12室から着手する段階的な計画をご提案しました。

これにより、緊急性と費用対効果の高い順序で対策を進めることが可能になりました。長期的な視点での施設維持に貢献できたと考えております。

3:施工の制約を事前開示し、完了後は菌数値で安全性を証明

施工が完了しても、本当にカビが除去できたのか、目視だけでは不安が残るものです。

弊社では、天井裏の構造上、物理的に薬剤が届かない可能性があることを、お見積りの段階で正直にお伝えしました。そして施工後には、ATP測定という手法で菌の残存量を数値化し、施工前後の写真と客観的なデータをセットでご報告しています。

すべての施工箇所で菌数が安全な基準値以下になったことをご確認いただき、数値的根拠に基づいた確かな安心感をお届けすることができました。

代表 穂苅からのコメント


今回の事例で最も重要だったのは、隣り合う部屋でさえカビの状況がまったく異なる、その根本原因を解明することでした。弊社の強みである、建築と環境の視点を組み合わせた複合的な原因分析が、この難問を解く鍵となりました。科学的な根拠をもってご説明した際、ご担当者様が長年の疑問から解放されたような安堵の表情をされたのを見て、私たちもこの仕事の意義を改めて感じました。

 

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