事例の概要
千葉県船橋市の建設会社様が施工した福祉施設でのカビ発生に対し、客観的な調査で汚染範囲を特定し、内装解体後の隠蔽部まで含めた施工で、施設側への説明責任を果たし再発防止の道筋をつけた事例です。
課題
- 施工元として施設への説明責任があり、客観的根拠が必要だった
- 汚染範囲が不明で、適切な施工範囲を判断できなかった
- 福祉施設のため、利用者への健康影響も懸念されていた
成果
- 数値データに基づき汚染範囲を特定し、適切な施工ができた
- 隠蔽部まで施工し、施設側と社内への説明根拠を確保した
- 施工後の検査で清潔な状態を証明し、安全性を確認できた
抱えていた課題/依頼の背景

今回ご依頼いただいたのは、約5年前に福祉施設を施工された建設会社様(以下、同社)です。その施設においてカビの発生が確認され、施工会社というお立場から、施設側への説明責任が問われる可能性のある状況でした。
施設側からは「なぜカビが出たのか」「どこまで対応するのか」といった点が問われることが想定されるため、見た目の感覚だけでなく、客観的なデータに基づいて汚染状況を正確に把握する必要がありました。特に、汚染の程度や人体への影響の可能性、そして費用の内訳を事前に明確にすることが、社内での予算化や施設側への説明に不可欠だったのです。第三者による客観的な調査報告書がなければ今後の対応方針を決められない、という切実な背景から、弊社へご相談をいただきました。
今回案件のポイント
本件の最大のポイントは、汚染の程度に大きなばらつきがある状況下で、どこまでを施工範囲とするか、その判断根拠を客観的な数値で示すことでした。
調査の結果、ある居室では「汚染区域」に該当する252CFU/100Lという高い数値が確認された一方、宿直室は6CFU/100Lと、地点によって汚染度に40倍以上の差があることが判明しました。また、建材の含水率は0.2〜1.2%程度で乾燥しており、「現在進行形で濡れているからカビた」という単純な構図では説明できない状況です。
これらの調査結果から、表面的な清掃では不十分であり、内装を一部解体して壁内や天井裏といった隠蔽部まで処置するという方針が導き出されました。数値という客観的な根拠があったからこそ、この踏み込んだ判断が可能になったのです。加えて、解体工事と並行して進む現場であったため、他業者の工程を妨げない柔軟な対応も求められました。
依頼から診断/施工完了までの流れ
ご依頼をいただいてから診断、施工完了までの主な流れは以下のとおりです。
診断の実施

- 費用と調査内容の事前説明
現地調査費や各種検査費、報告書作成費などの内訳を事前にご提示しました。あわせて、調査は建物内のカビの状況を明らかにするものであり、個人の健康への影響そのものを判定するものではない、という調査の範囲についてもご説明いたしました。 - 現地調査
居室5室、デイルーム、廊下、宿直室などを対象に、計10検体を採取する調査を実施しました。 - 浮遊菌検査
専用の機器で空気中のカビの数を測定した結果、居室①が252CFU/100Lで「汚染区域」、他の4室が「準汚染区域」に該当することを確認しました。一方でデイルームや宿直室は低い数値であり、汚染の強い箇所が局所的に存在していることが明らかになりました。 - 付着菌検査・菌種同定
壁などに付着しているカビの種類を特定するため、菌を培養して検査しました。アスペルギルス属、クラドスポリウム属などを確認しています。 - 含水率測定
建材の水分量を測定したところ、0.2〜1.2%程度で乾燥状態と評価しました。現在進行形の漏水などが主な原因である可能性は低く、過去の湿潤や結露、通気条件といった別の要因を検討する必要があると整理しています。 - 報告書の作成・提出
調査から2週間後、測定結果と菌種を整理した報告書をご提出しました。特に汚染レベルが高かった居室については、可能な限り入室を避けることを推奨するなど、具体的な対策についても記載しております。
施工の実施

- 内装解体後の施工
内装が一部解体されたタイミングで、522㎡を対象に除カビ・防カビ施工を実施しました。軽量鉄骨や壁の内部、天井裏、配線周りなど、普段は見えない隠蔽部まで徹底的に処置を行っています。 - 施工工程
カビ取り剤の全面噴霧から始め、特に汚染がひどい箇所には刷毛で丁寧に薬剤を塗布しました。その後、アルミ部や配線に付着した薬剤の拭き取り、天井裏への機械噴霧、そして最後に全体を防カビ剤でコーティングするという手順で進めました。 - 現場条件への対応
一部の箇所では、他業者様によってすでに養生シートが設置されていました。そこで、養生の撤去や再設置を求めるのではなく、ノズルを養生の内側へ差し込む形で防カビ剤を噴霧。現場の工程を止めない方法で対応いたしました。 - 施工後の菌数検査
施工の効果を客観的に確認するため、デイルーム、宿直室、居室2室で菌数検査を実施しました。測定した4地点すべてで、カビの数が「清潔」とされる基準値内であることを確認しています。 - 施工報告書の提出
施工後数日以内に、作業内容と施工後の検査結果をまとめた報告書をご提出し、すべての工程を完了といたしました。
得られた結果

汚染の偏在が数値で可視化され、感覚に頼らない適切な施工範囲が明確になりました。含水率の測定により、現在進行形の湿害が原因ではないことが確認され、原因の切り分けも進んでいます。
内装解体後のタイミングを活かし、隠蔽部を含む522㎡の除カビ・防カビ施工を完了。施工後の菌数検査によって作業品質が客観的に証明され、安全な状態を取り戻せたことを確認できました。
調査と施工の報告書が揃ったことで、施設側および社内への説明責任を果たすための客観的な根拠が整いました。
今回案件で発揮できたハーツリッチの強み
1:汚染状況の数値化で、過不足ない施工範囲と費用を提示
施工元というお立場上、施設側にも社内にも説明できる客観的な根拠を強く求められていました。感覚的な判断で施工範囲を決めれば、過剰な対応によるコスト増や、逆に対応不足による再発リスクを招きかねません。
そこで弊社は、国の基準に準拠した浮遊菌調査を実施しました。調査の結果、汚染レベルが低い箇所(6CFU/100L)と極めて高い箇所(252CFU/100L)が混在している「汚染の偏在」を、数値で明確に示しました。
これにより、施設全体を画一的に扱うのではなく、汚染が深刻な箇所に絞った合理的かつ効果的な施工範囲をご提案することができました。事前に詳細な費用内訳も明示したことで、ご担当者様が迅速に合意形成と予算化を進める一助となれたと考えております。
2:複合的な原因分析で、見えない壁の裏側まで徹底除カビ
今回のカビ発生は、「濡れているから」という単純な原因ではありませんでした。もし原因の特定を誤れば、表面的な処置に終始してしまい、根本的な解決には至りません。
弊社では、建材の含水率測定も実施し、「現在進行形の湿害が主因である可能性は低い」と判断しました。過去の湿潤や結露、建物の通気条件など、別の要因を多角的に検討する必要があることを示唆しています。この分析があったからこそ、内装解体後のタイミングを捉え、壁内や天井裏といった通常は手が届かない隠蔽部まで施工するという、踏み込んだ対策が不可欠であると判断できたのです。
この一連のプロセスは、施工元である建設会社様が、施設側へ原因を複合的に説明するための重要な情報の提供にもつながりました。
3:現場の状況に合わせた柔軟な施工と、一貫体制による品質証明
本件の施工は、内装の解体工事と並行して進む特殊な現場でした。他業者の工程をいかに妨げずに作業を完了させるかが、プロジェクト全体の成否に関わります。
現場では、他業者様が設置された養生シートを無理に撤去させるのではなく、シートの内側にノズルを差し込んで薬剤を噴霧するなど、状況に合わせた柔軟な対応を徹底しました。これにより工事全体の遅延を回避し、スムーズな連携のなかで施工を完了させています。
さらに、弊社の強みは調査から施工、そして施工後の効果測定まで一貫して対応できる点にあります。施工後の菌数検査で「清潔」な状態になったことを客観的に証明し、その結果を報告書に含めることで、「作業して終わり」ではない、根拠に基づいた安心を提供いたしました。
代表 穂苅からのコメント
今回は施工会社様というお立場で、非常に難しい判断を迫られていたかと存じます。汚染度に大きなばらつきがあるなか、弊社の科学的な調査データが、施設様へのご説明や適切な施工範囲を決定する一助となれたことを嬉しく思います。見えない部分の不安を解消し、皆様が安心して過ごせる環境を取り戻すお手伝いができ、心から安堵いたしました。
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今回は施工会社様というお立場で、非常に難しい判断を迫られていたかと存じます。汚染度に大きなばらつきがあるなか、弊社の科学的な調査データが、施設様へのご説明や適切な施工範囲を決定する一助となれたことを嬉しく思います。見えない部分の不安を解消し、皆様が安心して過ごせる環境を取り戻すお手伝いができ、心から安堵いたしました。