カビの専門家が教える!台風・集中豪雨などの水害によるカビ対策
近年、異常気象の影響で世界各地で台風や集中豪雨による水害が頻発しています。
そして、日本でも毎年のように豪雨や河川の氾濫、床上・床下浸水が発生し、多くの家庭や施設が甚大な被害を受けています。
これらの水害は、物理的な破損にとどまらず、湿気を残したまま放置することでカビの繁殖を招き、健康被害や建物の劣化といった二次被害を引き起こします。
水害は「自分とは関係ない」と思いがちですが、地球温暖化の進行により、これまで水害の少なかった地域でもリスクが高まっているため、今や誰にとっても他人事ではありません。
実際の被害を想定した備えと、水害発生後の迅速な対応が今後ますます重要になるでしょう。
この記事では、カビ対策の専門業者の視点から、災害後の適切な対応や長引くカビ被害を防ぐための予防策を紹介します。
事前の準備から、万が一被害が発生した際の具体的な対処方法まで、快適な生活空間を守るためのポイントを解説します。
この記事でわかること |
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目次
1.水害による被害とカビの発生メカニズム
水害は、建物や家財の物理的な破損だけでなく、その後の湿気とカビの問題によって、被害がさらに拡大するという特徴があります。
水に浸かった家屋は、内部に大量の水分を含んでしまい、十分な乾燥を行わない限り、カビの温床となります。
以下では、台風や豪雨の増加に伴うカビ被害のリスクと、具体的な国内外の事例をもとに水害後のカビの繁殖メカニズムを解説します。
1-1.台風・豪雨による水害の増加とカビ被害のリスク
近年、地球温暖化により大気中の水蒸気量が増加し、台風の勢力や集中豪雨の頻度が増しています。
これに伴い、日本国内でも河川氾濫や内水氾濫などの水害が頻発し、多くの家庭や施設が被害を受けています。
国土交通省のデータによると、過去5年間の水害被害額の平均をとって各年ごとに比較したところ、1995年に一般資産被害額が約1622億円だったのが、2004年には95年の価格換算で約4360億円になったそうです。
要するに、被害額が10年間で2.6倍以上増加したことになります。
出典:国土交通省 水害対策を考える 10年間で水害被害2.6倍に
近年においても、令和3年に3600億円、令和4年に6100億円の被害が発生しており、大規模な水害が継続的に起きています。
特に被害が大きかったのが東日本台風が発生した令和元年で、広範囲で甚大な被害が発生したため、被害額が2兆1800億円と、津波以外の水害被害額としては統計開始以来最大になりました。
年によってばらつきはあるものの、全体的に水害の被害は増加傾向にあるため、これまで関係のない地域にお住まいの方でも他人ごとではなくなってきています。
水害といえば、浸水によって建物や家財が破損したりするものですが、それらの被害がなかったとしても、浸水したことで湿気がこもり、しばらく経ってからカビが発生するという被害もあります。
カビは水分と適度な温度で急速に繁殖し、壁や家具、床下に定着して健康被害や建物の劣化を引き起こします。
特に水害後の湿潤環境は、一般的な生活環境に比べ、より速いスピードでカビは繁殖します。
さらに、汚水の侵入により外部からカビの胞子が運ばれることで、被害は広範囲に拡大しやすいです。
これにより家財が修復不能となったり、居住空間全体にカビの胞子が飛散し、アレルギーや肺炎などの健康リスクが高まります。
そのため、水害発生後は早急な対策が必要不可欠なのです。
参考:国土交通省 令和元年の水害被害額(確報値)を公表
参考:国土交通省 令和3年の水害被害額(確報値)を公表
参考:国土交通省 令和4年の水害被害額(確報値)を公表
1-2.東海豪雨や海外事例から学ぶ水害後のカビ繁殖
秋田県立大学内で行われた人為的な床下浸水シミュレーションによる実験では、相対湿度の上昇によりカビの増殖が促進されることがわかりました。
また、カビによる健康被害の原因種ともされているアスペルギルス属のカビが、約2か月間で4倍に増殖するという結果が出ています。
汚水によって外部からカビの胞子が入り込むという点を踏まえると、水害の現場では研究結果以上に速いペースでカビが繁殖することが想定されるでしょう。
実際、水害後に内部に湿気が残ったことで深刻なカビ被害が発生した事例もたくさんあります。
たとえば、2000年の東海豪雨で水害を受けた会社では、浸水被害は免れたものの、書類や写真がカビに侵され、電子機器が修復不可能な状態に陥ったと報告されています。
特に、書籍や書類のカビ被害は深刻で、適切な管理が行われないとその後の使用が困難になるでしょう。
また、2005年のアメリカ・ニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナの際には、高湿度の環境が発生し、スタキボトリス属などのカビが住宅内部に大量発生しました。
この時、住宅内で検出されたカビの胞子濃度は通常時と比べて異常に高く、住民の健康被害も深刻化しました。
このように、水害が発生した現場では、時間が経過してからカビの被害が顕在化することがあります。
たとえ水が引いて浸水被害が収束したように見えても、湿気を含んだままの家屋や家具はカビの温床となり、次々と新たな被害が発生するのです。
カビを放置してしまうと、繁殖が進むだけでなく、空気中に胞子が拡散され、他の場所にもカビが広がってしまいます。
これにより、家屋や家具の劣化が進むだけでなく、住む人の健康にも深刻な影響を与える可能性があります。
そのため、水害による被害は一時的なものではなく、慢性的かつ長期的に影響が及ぶ可能性が高いといえます。
こうした被害を防ぐためには、早急に湿気の原因を解消し、適切な乾燥とカビの除去を行うことが不可欠です。
2.水害後の初期対応と必要な道具
続いて、水害によって家屋が被害を受けた際にどのような道具が必要で、どのように初期対応するべきなのかカビの専門業者の視点から解説します。
2-1.作業に必要な服装と安全装備の準備
水害後の清掃作業やカビの除去は、汚水や粉じん、カビの胞子と直接接触するリスクが高いため、安全な服装と装備を準備することが非常に重要です。
災害時にすべて揃えるのは難しいかもしれませんが、できるだけ揃えるようにしましょう。
①長袖・長ズボンの汚れても良い服
水害時には汚水による汚れが酷く、何が散乱しているか分からない状態です。
また、カビを除去する際に薬品を扱うため、肌を保護する必要があります。
そのため長袖・長ズボンで、汚れても良い服を着用するようにしましょう。
割烹着や実験などで使用する白衣なども代用可能です。
②マスク
カビの胞子や粉じんを吸い込むと健康被害が発生するため、マスクを着用しましょう。
できればN95マスクなど高性能な防塵マスクの使用を推奨します。
③ゴム手袋と軍手
汚水や薬品に触れないよう、ゴム手袋を着用しましょう。
特に水害時の清掃の際にはゴム手袋の上から軍手をすると、滑りにくく、さらに手が濡れないのでお勧めです。
④ゴーグル
薬品や汚水が跳ねて目に入ることを防ぐため、ゴーグルを着用して目を保護しましょう。
⑤薬剤(エタノール・塩素系漂白剤など)
カビの除去に使用するため、消毒用エタノールや塩素系漂白剤も準備しておくと良いでしょう。
薬剤の使用方法と注意点については、後ほど3.水害後にカビが発生した場合の対応策で解説します。
2-2.カビの発生を防ぐ!家屋・家具の乾燥方法
水害後は家屋や家具が水分を含んだ状態になるため、乾燥させてカビの発生を防ぐことが重要です。
もし乾燥が不十分だと、家屋や家具にカビが広がる可能性があるため、後の被害を食い止めるためにも天井から床下までしっかりと乾燥させるようにしましょう。
この作業が一番大変かもしれませんが、何よりも大事なので徹底的に行ってください。
以下の2つの方法で効果的に乾燥を進めましょう。
扇風機(送風機)を用いた乾燥法
扇風機(送風機)を使った乾燥は、室内の湿気を外に排出し、家屋の内部や家具の表面を素早く乾燥させることができます。
特に雨天時や日照が弱い場合に有効で、除湿機を併用することでさらに高い効果が期待できます。
ただし、送風によって汚泥やカビの胞子が飛散する恐れがあるため、作業中はマスクを着用し、周囲に配慮して行うことが大切です。
また、床下や家具の裏側といった見えにくい部分にも風を当てることで、湿気の残りを防ぎます。
太陽光による乾燥法
天候に恵まれた場合には、太陽光を利用した乾燥も効果的です。
紫外線にはカビの繁殖を抑制する働きがあり、家具や家屋の一部を屋外に干すことで、乾燥と除菌を同時に行うことができます。
しかし、天候に左右されやすいため、雨が続く場合には他の乾燥手段に切り替える必要があります。
また、革製品や木材など日光に弱い素材は、色あせや劣化を防ぐために直射日光を避けるか、陰干しを行うことが推奨されます。
カビにとって最も不都合な状態は、水分を補給できない環境です。
そのため、徹底した乾燥が家屋や家財の寿命を大きく左右します。
床下や屋根裏、家具の裏など、普段は見えにくい場所ほど湿気が残りやすいため、想像以上に丁寧な乾燥が必要です。
特に床下の乾燥には時間がかかります。
秋田県立大学のコンクリートの床下の浸水シミュレーションによると、コンクリート部分の含水量が元の状態に戻るまで約半年を要するという結果が出ています。
さらに、床下の温度を上げて乾燥を促進したとしても、完全に乾くまでに2か月程度かかる可能性があるとされています。
たとえ見た目が乾燥しているように見えても、内部に湿気が残っていることが多いため、長期的な乾燥作業が不可欠です。
また、乾燥が終わった後には、汚泥やカビの胞子を徹底的に拭き取り、掃除することが重要です。
汚れが残っていると、それがカビが繁殖する為の栄養源になってしまいます。
ここでしっかり対策を行うことで、後の被害を防ぐことができ、家屋や家具を長持ちさせることにつながります。
■関連記事■カビ取り業者が教える!台風・大雨による床下浸水後のカビ対策
3.水害後にカビが発生した場合の対応策
乾燥を徹底して行っても、カビの発生を避けられないことがあります。
その場合はどのように対処すればいいのでしょうか?
ここでは、カビ発生時の対処方法について詳しく解説します。
3-1.家屋や家具のカビを除去できるか判断する
まず、水害によりカビが発生した家屋や家具が再利用可能かどうかを慎重に判断する必要があります。
除去後も使用できるかを見極め、被害の拡大を防ぐための適切な処置を行いましょう。
以下のポイントに注意してください。
家屋のヒビや漏水のチェックが重要
家屋の場合、壁にヒビが入っているかどうかを確認することが大切です。
ヒビがあると、そこから漏水が発生する可能性があり、湿度の上昇によってカビの発生リスクが高まります。
もしヒビがある状態で新たな壁紙を張るような施工を行うと、以下のような問題が発生することがあります。
- 壁と壁紙の間に湿気がこもる
- カビが繁殖し、壁紙が剥がれる
- 壁紙が剥がれることで再び修理が必要になる
このようなトラブルを防ぐためには、下地の処理を適切に行うことが不可欠です。
せっかく生活を再建したのに、再び工事が必要になると精神的な負担も大きくなります。
原状回復時には、見えない部分の確認を怠らず、慎重に対応しましょう。
■関連記事■壁に生えた気持ち悪いカビを一瞬で除去!最強の技をカビ取り業者が解説
家具の再利用の判断
家具の場合も、過度に水分を吸ったものは注意が必要です。
木製家具が水分を吸収すると、湾曲や変形が発生することがあり、乾燥後も元に戻らないことが多くあります。
また、水を吸った状態はカビが発生しやすい環境を作り出すため、カビ除去後も再発する可能性があります。
たとえば、お気に入りの家具を捨てたくないからと乾燥させて使おうとしても、後になってカビが再び発生し、使用が難しくなることも少なくありません。
そのため、被害の程度によっては、廃棄も選択肢に入れる必要があります。
無理に再利用しようとしてカビが再発すると、健康への影響が出る可能性もあるため、慎重に判断することが大切です。
3-2.消毒用エタノールを使ったカビ取り方法
続いて、カビを自力で除去できると判断した場合の対処方法です。
まずは消毒用エタノールを使ったカビ取り方法から紹介します。
消毒用エタノールはカビを効果的に除去できる薬剤です。
70~80%の濃度のエタノールを使用することで、カビの殺菌が可能です。
用意するもの
- 消毒用エタノール
- 柔らかい布
- マスク
- ゴム手袋
ドーバー パストリーゼ77
出典:amazon
注意点
- エタノールは引火性があるため、火気の近くでの使用は避けてください。
- ニスやワックスでコーティングされた家具はエタノールで表面が剥がれる恐れがあるため、目立たない部分で試してから使用しましょう。
手順
①事前準備する
作業前に換気を行い、マスク、ゴム手袋を着用します。
②エタノールを吹きかける
スプレーボトルに入れたエタノールを、カビが発生した部分に十分に吹きかけます。
③布で拭き取る
エタノールを浸透させるためにしばらく放置した後、柔らかい布で拭き取ります。
汚れが取れない場合は②~③の作業を繰り返し行ってください。
④乾燥させる
水分が残らないようにしっかり乾燥させます。
湿気が残ると、再びカビが発生する可能性があるため、風通しの良い場所で乾燥させましょう。
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3-3.塩素系薬剤をを使ったカビ取り方法
続いて、塩素系薬剤を使用した方法を紹介します。
塩素系薬剤は、カビを殺菌するだけでなく、カビによって残った色素の漂白も行えるため、壁面やタイル、シンクなどに染みついたカビ跡の除去に特に効果的です。
使用する薬剤には、界面活性剤が含まれたカビ取り剤やキッチン用漂白剤を選ぶと、汚れに対する効果が高まります。
ただし、塩素系薬剤は素材へのダメージや取り扱いに注意が必要です。
以下の手順と注意点を守りながら、安全かつ効果的に使用しましょう。
用意するもの
- 塩素系カビ取り剤
- 柔らかい布
- マスク
- ゴム手袋
- ゴーグル
- 長袖・長ズボン
ジョンソン カビキラー
出典:amazon
注意点
- 塩素系薬剤が皮膚に触れると化学やけどの原因になるため、マスクやゴム手袋、ゴーグル、長袖長ズボンを着用して体を保護し、作業時には十分に換気してください。
- 塩素系薬剤と酸性洗剤が混ざると有毒なガスが発生する恐れがあるため、絶対に混ぜないでください。
- カビ取り剤によって素材が変色や劣化することもあるため、目立たない場所で事前にテストすることをおススメします。
- 薬剤が残ると素材が劣化する恐れがあるため、作業後は水で洗い流すか、丁寧に水拭きしてカビ取り剤の成分が残らないようにしてください。
手順
①事前準備する
作業前に換気を行い、マスク、ゴム手袋、ゴーグル、長袖・長ズボンを着用します。
塩素系薬剤は皮膚や目に触れると危険なため、肌の露出を防ぎましょう。
②カビ取り剤を吹きかける
カビの生えた部分に、カビ取り剤を均等にスプレーします。
液剤が垂れないように、まんべんなく行き渡るよう注意しましょう。
③しばらく放置した後に水で洗い流す
薬剤が浸透するまでしばらく放置します。
それから水でしっかり洗い流してください。
水洗いできない箇所の場合は、薬剤が残らないように柔らかい布でしっかりと水拭きしましょう。
④乾燥させる
乾燥が不十分だと再びカビが発生する原因になるため、風通しの良い場所で完全に乾燥させてください。
3-4.プロレベルのカビ取り剤を使用する
水害後のカビ取りには、自力でできる対策としてハーツクリーンが開発したカビ取りマイスターキットの使用をおすすめします。
このキットは、プロの業者が使う液剤を家庭用に改良したものなので、一般のご家庭でもプロレベルのカビ取りが可能となります。
また、市販の塩素系カビ取り剤とは異なり、カビ取りマイスターキットには危険な成分が含まれていないため、洗い流せない木材や壁紙などのカビ取りにも安心して使えます。
さらに、このキットには防カビ剤もセットされているため、カビを取り除いた後に防カビ剤を噴霧することで、長期間にわたって再発を防ぐことができます。
徹底的にカビ取りして、再発を防ぎたい場合は、是非ご購入を検討してみてください。
4.長期的な対策でカビ被害を防ぐために
水害後のカビは、短期的な清掃だけでは完全に解決できないため、時間をかけた徹底的な対策が必要です。
湿気は目に見えにくい場所に残りやすく、放置するとカビが発生するリスクが高まります。
そのため、長期的な管理と乾燥・予防を習慣づけることが大切です。
4-1.カビ被害の長期化を防ぐためのポイント
床下や屋根裏、家具の裏側など、人の目が届きにくい場所は湿気が溜まりやすいため、定期的に点検を行いましょう。
こうした場所はカビが発生するリスクが高いので、少しでも異常を感じた場合は早めに確認し、対処することが重要です。
また、湿気の多い場所では、除湿機や換気扇を活用して湿度をコントロールすることが効果的です。
特に雨の日や梅雨時期には湿度が高くなるため、日頃からこまめに換気を行い、湿度管理を徹底しましょう。
カビは発生してから短期間で広がるため、見つけたらすぐに対応することが被害の拡大を防ぐポイントです。
小さなカビでも放置しておくと被害が広がり、健康リスクや建物の劣化につながるため、早めに除去しましょう。
4-2.施工支援や専門業者への相談
水害によるカビ被害は、自己対応だけでは十分に対処できない場合もあるため、専門業者に相談することを検討しましょう。
業者は、専用の機器を使って床下や壁の内部の湿度を測定し、目に見えない部分に潜む湿気の原因を特定するため、適切かつ効果的な対応が可能です。
また、殺菌力が高いカビ取り剤や高濃度の防カビ剤を使用することで、自己対応よりも効率的にカビの除去やカビ予防を行うことができます。
もし、すでに水害によるカビ被害でお悩みでしたら、ハーツクリーンにご相談ください。
弊社はこれまでにも、水害の被害を受けた住宅のカビ取りやカビ対策を多数おこなっております。
水害被災者向けの特別価格で施工も提供しておりますので、まずは一度お問合せください。
5.水害被害を最小限に抑えるための事前対策
水害はいつどこで発生するか予測が難しいため、災害に巻き込まれる前に被害を最小限に抑える対策を行うことが重要です。
万が一、浸水してしまった場合でも被害が拡大しないように準備を進めることで、家族や財産の安全を守ることができます。
以下では、漏電防止、重要書類の保管、水害リスクの低い住環境選びの観点から有効な対策を紹介します。
5-1.漏電防止と電子機器の保護
浸水によって電気配線や電子機器が濡れると、漏電事故や火災、データ損失などの二次被害が発生するリスクが高まります。
こうしたリスクを最小限に抑えるためには、タコ足配線の管理と電子機器の設置場所の工夫が重要です。
まず、電源タップや延長コードなどは、結束バンドを使って壁や棚の高い位置に固定して、床上浸水時の被害を防ぎましょう。
また、備え付けのコンセント自体の漏電防止は難しいため、事前に避難経路の確保と電気の遮断方法を確認しておくことが大切です。
パソコンや外付けハードディスクなど、重要なデータが保存されている電子機器も同様に、床から高い位置に設置し、できる限り浸水のリスクを減らしてください。
また、電子機器は防水ケースや防水バッグに収納することで、より安全に保管できます。
特に、長期間の外出や不在がある場合は、こうした対策を徹底しましょう。
5-2.書類・写真の適切な保管
書類や写真は一度濡れてしまうと、元の状態に戻すのが非常に難しく、さらにカビの温床になることもあります。
そのため、これらの大切な品は、防水対策を施したうえで保管することが推奨されます。
具体的には、防水ファイルや防水ケースを活用し、契約書や証明書、思い出の写真などを保護しましょう。
また、これらの品をクローゼットの上段や棚の高い場所に保管することで、浸水被害のリスクを軽減できます。
特に、写真は水に濡れると剥がれてしまうことがあり、復元が非常に困難なので、早めに移動するようにしましょう。
さらに、重要な書類や写真はデジタル化してクラウドに保存することも効果的です。
デジタルデータとして保管しておけば、たとえ現物が被害を受けても、クラウドから復元が可能です。
日頃からスキャンしたデータをバックアップしておくことが、災害時の安心につながります。
5-3.水害リスクの低い住環境選び
住む地域の選定も、水害被害を避けるために非常に重要です。
以前は水害のなかった地域でも、気候変動の影響で浸水リスクが高まっているため、引っ越しや家の購入を考える際には、地域の水害リスクを事前に把握することが不可欠です。
まず、市区町村が提供するハザードマップを確認し、自宅や職場周辺の洪水や浸水リスクを調べましょう。
特に、河川の近くや海抜の低い地域では浸水のリスクが高いため、慎重に検討することが求められます。
また、住居を選ぶ際には、地盤が緩い地域を避け、地盤の強い場所を選ぶことで、浸水や地盤沈下による建物損傷のリスクを減らすことができます。
万が一、水害リスクのある場所に住む場合でも、事前に高台への避難経路や避難場所を把握しておくことが重要です。
災害時には、慌てずに避難できるように、家族全員で避難ルートを確認しておきましょう。
6.まとめ
今回は、水害発生時のカビの予防策や、カビが発生した場合の具体的な対応方法について解説しました。
水害は、建物や家財への物理的なダメージだけでなく、その後に残る湿気が原因でカビの発生という二次被害を引き起こします。
万が一水害に遭った際には、安全な服装と適切な道具を準備し、徹底した乾燥作業を行うことで、カビの発生を防ぐことが重要です。
もし、カビが発生してしまった場合は、エタノールや塩素系薬剤を正しく使用し、早めに除去することが被害拡大を防ぐポイントとなります。
また、広範囲にカビが広がった場合や、床下・壁内部までカビが浸透している場合は、専門業者の力を借りることを検討しましょう。
プロによる施工は、見えない湿気や隠れたカビのリスクにも対応できるため、長期間にわたって快適で安心な住環境を維持することができます。
ハーツクリーンでは、これまでに多くの水害被害を受けた住宅でカビ取りをしてきました。
水害後のカビ対策に関するアドバイスや専門的なサポートも提供しておりますので、カビにお困りの際は是非お問合せください。
参考文献
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