事例の概要
茨城県つくば市にある国の公的研究機関の宿泊施設で、夏季に再発するカビの原因を詳細調査で特定し、公的機関特有の厳格な調達手続きを経て施工を完了させた事例です。科学的根拠に基づく施工内容と弊社の特許技術をご評価いただき、省庁の施工仕様書に弊社の工法が採用されたほか、次期49室の施設改善へとつながりました。
課題
- 夏季に繰り返すカビの原因が、季節要因か建物固有の問題か不明だった
- 技術的に正しい施工でも、公的機関の調達ルールに阻まれた
- 表面的なカビの状況と、内部の汚染度が一致しない恐れがあった
成果
- 詳細調査で結露の反復という原因を特定し、大規模施工の技術的根拠が整った
- 調達手続きを完遂し、年度予算内で計画どおりに施工を終えた
- 特許技術に基づく工法が省庁の施工仕様書に採用され、次期49室の改善計画も前進した
抱えていた課題/依頼の背景

今回ご相談いただいたのは、ある国の公的研究機関様(以下、同社)です。同社が管理する研究者向けの宿泊施設では、特に夏季になるとカビが繰り返し発生し、長年の課題となっていました。
ご担当者様が頭を悩ませていらっしゃったのは、その原因が季節的なものなのか、建物固有の構造に問題があるのか、あるいは空調の運転方法によるものなのか、判断がつかないという点でした。設備会社からはエアコンの特性について説明を受けていたものの、カビ発生の根本的な理由としては納得できるものではなかったそうです。
技術的な原因究明に加え、公的機関特有の複雑な調達手続きも、解決に向けた大きな壁となっていました。技術的に正しい施工を提案するだけでなく、年度予算や契約区分、入札資格(全省庁統一資格)、膨大な提出書類といった厳格なルールを乗り越えられる専門家が必要だとお考えになり、弊社にご相談をいただく運びとなりました。
今回案件のポイント
本件の成否を分けたのは、夏季に再発するカビの原因を科学的に特定したうえで、その調査結果を公的機関特有の厳格な調達ルールに乗せ、契約から施工完了まで一貫して実行できるかという点にありました。
まず、菌数測定や過去の温湿度データとの照合により、カビの原因がエアコン起動時に繰り返される一時的な結露にあることを突き止め、汚染が壁の内部にまで及んでいる実態を数値で明らかにしました。その結果、施設全体のカビ環境をリセットする大規模な施工が必要と判断されました。しかし、公的機関では契約金額によって契約方式そのものが変わるため、施工額は単なる「高いか安いか」ではなく、どの調達方式で発注できるかを左右する重要な数字となります。そのため、理想的な施工案とご予算内に収まる現実的な案の両方を比較検討できる形で見積を提示し、ご担当者様の内部調整をサポートしました。
また、そもそも施工実績があるだけでは入札に参加できません。弊社では、速やかに統一資格審査申請を行い、発注可能な事業者としての前提条件を整えました。さらに、壁紙を剥がすことで初めて可能になる「追加調査の機会」を活かし、表面からは把握できなかった壁内のカビを部屋ごとに記録・分類して、次期工事の優先順位を判断するための客観的な資料として提供しています。こうした科学的根拠に基づく一連の対応と弊社の特許技術をご評価いただき、省庁の施工仕様書に弊社の工法が採用されるという成果にもつながりました。
依頼から診断/施工完了までの流れ
ご依頼をいただいてから診断、施工完了までの主な流れは以下のとおりです。
診断の実施

- 現地調査
専用機器による菌数検査をはじめ、外観の目視確認、そして研究室レベルの精度で菌を特定する寒天培地による培養調査を実施しました。 - ATPふきとり検査
壁紙の裏側(クロス裏)では数値が0〜120程度と低い一方、その内側にある石膏ボードの裏では最大で8,770という高い数値を確認しました。これは報告書上の「汚染」基準である3,001を大幅に超えるもので、問題が表面ではなく壁の内部にあることを明らかにしています。 - 浮遊菌調査
室内の空気中に浮遊しているカビ胞子の量を測定しました。居室内で最大235CFU/100L、普段は確認しない天井裏でも168CFU/100Lという値が確認され、空間全体が汚染されている状態をデータで示しました。 - 温湿度データとの照合・原因考察
過去の温湿度測定結果と今回の調査データを照合し、エアコン起動直後に発生する一時的な結露が、繰り返されることでカビを蓄積させた可能性を指摘しました。普段は乾燥していてもカビが生える、という矛盾した状況の根本原因を解明しています。 - 対策方針の提示
調査結果に基づき、まずは既存のカビ汚染をリセットする大規模な施工が必要であると判断しました。あわせて、再発防止策として湿度計の継続的なデータ取得や、エアコン設定の見直しといった具体的な運用改善策もご提案しました。
施工の実施

- 施工計画と調達手続き
調査結果をもとに、19室の壁紙交換や防カビ施工などを含む詳細な施工案を作成しました。年度予算や契約区分を考慮し、施工範囲を調整した複数パターンの見積を提出することで、ご担当者様の意思決定を支援しています。同時に、入札に必須となる統一資格の申請手続きを進め、契約に向けた準備を整えました。 - 分割施工
宿泊施設の運用に影響が出ないよう、8月から9月にかけて複数日に分けて施工を実施しました。一括での長期閉鎖を避け、施設の稼働と並行しながら計画的に作業を進めています。 - 壁紙剥離と除カビ・防カビ施工
対象となる各居室で既存の壁紙を丁寧に剥がし、専門の薬剤を用いて除カビ・防カビ処理を徹底しました。その後、新しい壁紙を貼り替えるまでを一貫して行い、すべての工程を写真で記録しています。 - 施工中の壁内追加調査
壁紙を剥がしたことで、表面からは分からなかった壁内部やユニットバス上部のカビが多数確認されました。特に、表面上は軽度に見えた上階の部屋でも壁内汚染が判明し、見た目と内部のリスクが必ずしも一致しないことを明らかにしています。これらの発見はすべて記録・分類し、次期工事の優先順位を決めるための重要な資料としました。 - 完了書類の作成・提出
完了通知書や、施工前後の写真、ATPふきとり検査の結果をまとめた業務報告書など、公的機関の求める水準に合わせた正式な書類一式を作成・提出しました。専門家以外の方が読んでも理解できるよう表現や体裁を整え、スムーズな検収をサポートしています。
得られた結果

エアコン起動時に繰り返される一時的な結露が原因であるという技術的根拠が整い、壁紙剥離を伴う大規模施工の必要性が客観的なデータで裏付けられました。
予算と契約方式に応じた最適な施工範囲を、発注者側で主体的に決定できたうえ、年度スケジュール内に公共調達の一連の手続きから施工までを完遂しています。施工後は全室で清浄度が社内の清潔基準内(1~500CFU)に収まり、より良い環境が確保されました。
さらに、科学的調査に基づく施工内容と弊社の特許技術をご評価いただき、省庁の施工仕様書に弊社の工法が採用されました。あわせて、壁内汚染の実態が可視化されたことで、次期49室の工事計画へと発展しています。
今回案件で発揮できたハーツリッチの強み
1:科学的調査に基づく複数パターンの施工計画で、予算内での最適な意思決定を支援
ご依頼いただいた当初、ご担当者様は原因不明のカビに対し、どこまで施工すべきか、そしてそれを予算内でどう収めるべきか、明確な判断基準をお持ちではありませんでした。
そこで弊社は、まず菌数測定によって汚染度を客観的な数値で可視化しました。特に壁紙の裏側と、さらに内部の石膏ボード裏の数値を比較することで、表面的な処置では不十分であり、壁紙の剥離を伴う根本的な施工が必要であることをデータで裏付けています。
さらに、公的機関では契約金額が契約方式そのものを左右するという特殊な事情を考慮し、技術的に理想的な案と、ご予算内で実行可能な案を複数パターンでご提示しました。これにより、発注者様が内部調整を行うための客観的な判断材料が揃い、納得感を持って施工範囲を決定いただくことができました。
2:公共調達の複雑な手続きを一貫して代行し、円滑な予算執行を実現
公的機関の案件では、いかに技術的に優れた提案であっても、統一資格の有無や特殊な事務処理など、厳格な調達ルールをクリアしなければ発注に至りません。
弊社では、入札参加に必須となる統一資格の審査申請から代行し、ご担当者様の負担を軽減しました。契約後も、業務計画書や完了報告書といった公的機関が求める水準の書類を正確に作成しています。
また、報告書が承認されるまで請求書を発行しない、といったお客様独自の内部運用にも柔軟に対応しました。専門的な施工能力だけでなく、こうした一連の事務手続きを一貫してサポートすることで、年度予算の執行スケジュールに遅れることなく、計画どおりの契約・施工を完了させました。
3:施工中の追加調査で潜在リスクを可視化し、複数年度にわたる施設改善計画へ貢献
もし表面的なカビの処置だけで終わっていれば、建物の本質的な劣化を見過ごし、いずれ再発していたかもしれません。
弊社では、今回の施工を単なる原状回復作業ではなく、「建物の内部を直接確認できる貴重な追加調査の機会」と捉えました。壁紙を剥がして初めて確認できた壁内のカビを「契約範囲外」として見過ごすのではなく、全室で状況を写真に記録し、汚染度合いを分類してご報告しています。
その結果、表面の見た目と内部の汚染度が必ずしも一致しないという重要な事実が明らかになり、次期工事で優先すべき部屋が明確になりました。今回の一度の対応が、計49室を対象とした、より計画的で無駄のない施設全体の改善へとつながったのです。
4:特許技術に基づく工法が省庁の施工仕様書に採用され、継続的な施設管理の基盤に
公的機関の工事では、施工仕様書に定められた工法や基準が、その後の発注や施工の前提となります。そのため、一つの案件で成果を出すだけでなく、その工法が仕様として位置づけられるかどうかは、施設全体の長期的なカビ対策を左右する重要な要素です。
本件では、菌数測定による汚染度の可視化から、壁紙剥離を伴う除カビ・防カビ施工、施工後の清浄度確認まで、一連の工程を客観的なデータとともに報告しました。こうした科学的根拠に基づく施工内容と弊社の特許技術をご評価いただいた結果、省庁の施工仕様書に弊社の工法が採用されています。
これにより、今後同様の課題が生じた際にも、根拠のある工法で対策を進められる体制が整いました。一度の施工で終わるのではなく、発注者様の継続的な施設管理を支える成果となっています。
代表 穂苅からのコメント
今回の案件で最も重要だったのは、夏季に再発するカビの原因を科学的に突き止めたうえで、その解決策をお客様の組織特有のルールのなかでいかに実現するかという点でした。弊社の強みは、科学的な調査力だけでなく、こうした行政手続きの実務にも精通している点にあります。また、弊社の特許技術をご評価いただき、省庁の施工仕様書に弊社の工法が採用されたことは、一つの案件の成功にとどまらず、今後の公共施設におけるカビ対策にもつながる大変大きな成果でした。施工を終えた今、お客様が抱えていた難題を専門家として共に乗り越えられたことを、心から嬉しく思います。
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