事例の概要
施工会社とは別の第三者の立場でカビの定期調査を行い、対策後の環境が良好かどうかを数値で確認することで、予防的な管理体制の確立を支援した事例です。
課題
- 実施した対策後の環境が良好か、客観的に確認できなかった
- カビが目に見えないことをもって、安全と判断して良いか不明だった
- 深刻化する前の予防的な段階で、施設環境を定期的に把握したかった
成果
- 対策後の環境状態を、第三者の客観的な数値で確認できた
- 準汚染エリアを早期に特定し、深刻化する前に対策を検討できた
- 半年ごとの調査サイクルが確立し、予防的な管理体制が整った
抱えていた課題/依頼の背景

今回ご相談いただいた福祉施設様(以下、同社)は、利用者の方が日常的に生活・滞在する施設であるため、一般の建物以上に衛生環境や空気環境への配慮が求められる状況でした。
同社が抱えていた課題は、カビが発生したことそのものではありません。施設側で防カビ加工などの対策を実施した後、その効果がしっかりと維持されているかを、客観的に評価する手段をお持ちでなかった点にありました。
施工会社自身による評価では客観性を担保しきれず、また、カビが肉眼で見えないからといって問題がないとは断定できません。そこで、深刻なカビ被害が生じてから対応するのではなく、予防的な観点から定期的に状態を数値で把握したいという明確な方針のもと、第三者機関による客観的な調査を希望され、弊社にご相談いただく運びとなりました。
今回案件のポイント
今回の調査で最も重要だったのは、対策を行った施工者とは完全に独立した、第三者の立場から客観的な評価を提供することでした。当事者による自己評価では、どうしても判断の妥当性に疑問が残ってしまうためです。
弊社は施工には一切関与せず、調査と評価に徹しました。また、対策の効果を正確に比較できるよう、前回調査とまったく同じ地点・手法で測定を重ねることで、数値データを信頼性のある管理指標として機能させています。
さらに、検出されたカビの種類(アスペルギルス属)の性質から、このカビが比較的乾燥に強く、漏水だけでなく換気や清掃の状態も影響することを、根拠とともに報告しました。単に数値を報告するだけでなく、天井材のカビについては原因まで踏み込んで考察し、具体的な対策を提示することで、施設側が次にとるべき行動を明確にすることも重要な役割でした。
依頼から診断完了までの流れ

ご依頼をいただいてから診断完了までの主な流れは、以下のとおりです。
- 継続調査のご依頼
施設側で実施された対策から約半年が経過した段階で、現在の環境状態を客観的に確認したいとのご意向を受け、継続調査のご依頼をいただきました。弊社は施工には関与しない第三者の立場として、純粋な調査・評価を担当します。 - 浮遊菌検査の実施
前回調査と同じ、施設1階の10地点にて浮遊菌検査を実施しました。国の基準にも準拠した専用の捕集機(エアーサンプラー)を用いて一定量の空気を吸引し、空間の汚染度を正確に数値化します。 - 菌種の特定と原因考察
採取した検体を1週間かけて培養し、カビの種類を特定しました。今回はアスペルギルス属が確認されたため、その性質を踏まえた管理上の注意点もご報告しています。また、天井材に確認されたカビについては、エアコンの冷風による表面結露が原因である可能性を考察しました。 - 報告書の提出
現地調査から約2週間で、測定結果や原因考察、推奨される対策などをまとめた詳細な報告書を提出いたしました。この報告書が、施設側で今後の管理方針を検討するための客観的な判断材料となります。
得られた結果
第三者の立場から、施設側で実施された対策後の環境状態を、客観的な数値で確認できました。
大部分は良好な状態である一方、準汚染エリアを特定し、深刻化する前に対応を検討できる状態になりました。
天井材のカビについては原因候補と対策が示され、施設側が次にとるべき行動が明確になっています。さらに、半年ごとの調査サイクルが確立されたことで、問題発生後の対応ではなく、予防的な管理体制が整いました。
今回案件で発揮できたハーツリッチの強み
1:施工から独立した第三者評価で、客観的なカビ管理を実現

施設側で対策を施した後、その効果が本当に維持されているのか、当事者だけでは客観的な判断が難しい状況でした。自己評価では、どうしても「大丈夫だろう」という希望的観測が入り込む余地が生まれてしまいます。
そこで弊社は、施工には一切関与しない、調査・評価専門の第三者として介入しました。前回と同一地点・同一条件で測定を繰り返すことで、信頼性の高い比較可能なデータを蓄積するというアプローチです。
これにより、「対策したから大丈夫」という主観的な安心感ではなく、「数値として問題ない」という客観的な根拠が手に入りました。継続的な定点観測によって、施設側は自信を持って衛生環境を管理できる体制を整えることができました。
2:菌の性質と建物を踏まえた原因考察で、次の打ち手を明確化
単に空気中のカビの数値を報告されるだけでは、施設側は次の一手をどう打てばよいか、判断に迷ってしまいます。数値が良好であれば安心できますが、少しでも悪化の兆候があれば、その原因が分からず不安が募るだけです。
弊社では、検出された菌の数を報告するだけでなく、天井材のカビについては「エアコンの冷風による結露」という具体的な原因候補まで踏み込んで考察しました。さらに、検出されたアスペルギルス属が乾燥に強いという生物学的な性質をもとに、漏水だけでなく日々の換気や清掃の重要性も併せてお伝えしています。
数値の裏付けがある具体的な原因と対策案が示されたことで、施設側が次に何をすべきかが明確になりました。漠然とした不安が解消され、的確な予防策を講じることが可能になったのです。
代表 穂苅からのコメント
今回の事例の核心は、施工と評価を切り離し、客観的な数値を積み重ねていくことにありました。弊社が建築とカビ双方の知見を持つからこそ、単なる数値報告で終わらせず、その背景にある原因や必要な管理方法までご提案できます。定期的な調査を通じて予防的な管理体制が整い、施設に関わる皆様が日々の業務に安心して専念できるようになったことを、大変嬉しく思います。
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