施工事例

【詳細調査】国立大学の学生寮で繰り返すカビの原因を浮遊菌・含水率の数値で切り分け、「外気侵入・換気・生活習慣」の複合要因を特定して再発防止策を提示した事例

【詳細調査】国立大学の学生寮で繰り返すカビの原因を浮遊菌・含水率の数値で切り分け、「外気侵入・換気・生活習慣」の複合要因を特定して再発防止策を提示した事例

案件情報

住所
香川県高松市
物件用途
宿泊施設
作業内容
カビ汚染度調査(浮遊菌検査・含水率測定)・原因考察と対策提案・報告書作成
作業人数
調査1名
作業時間
現地調査 約5時間
作業面積
ー
作業費
調査 税込448,000円

事例の概要

「カビのにおいが気になる」「壁にシミのような跡が出てきた」――留学生を中心に多国籍の学生が生活する香川県高松市の国立大学学生寮(国際シェアハウス)で、入居者からの相談が相次いでいました。大学からの正式なご依頼を受け、浮遊菌検査と含水率測定による科学的な調査を実施。カビの原因が単一の不具合ではなく、「外気侵入による結露」「換気バランスの乱れ」「生活習慣」の3つが重なった複合要因であることを数値で切り分け、建物側の是正と運用面の改善を組み合わせた過不足のない再発防止策をご提示した事例です。

課題

  1. 居室でカビのにおいや壁のシミが相次ぎ、長期間生活する学生の健康面への影響が懸念されていた
  2. 清掃や換気を行ってもカビが繰り返し発生し、建物の問題なのか生活環境の問題なのか原因を特定できていなかった
  3. 国立大学という公的機関として、対策の要否と範囲を客観的な根拠をもって判断・説明する必要があった

成果

  1. 浮遊菌検査と含水率測定により、部屋ごとの汚染の濃淡(10〜103CFU/100L)と結露箇所(含水率2〜3%)を数値で可視化した
  2. カビの原因を「外気侵入・換気の不均衡・生活習慣」の複合要因と特定し、改修ありきではない対策方針を整理した
  3. 建物側の是正と運用面の改善を切り分け、優先順位をつけた再発防止策をご提示し、同大学による是正工事につながった

抱えていた課題/依頼の背景

学生寮の居室で梁の下の壁面に広がった点状のカビ

今回ご依頼いただいた国立大学様(以下、同大学)が運営する学生寮は、留学生を中心とした多国籍の学生が生活する国際シェアハウスです。入居者の入れ替わりが多く、出身国によって換気や洗濯、冷暖房の使い方といった生活習慣も大きく異なります。一般の住宅とは違い、「誰が・どのように住むか」を管理側がコントロールしにくい建物だといえます。

同大学には、入居する学生から「カビのにおいが気になる」「壁にシミのような跡が出てきた」といった相談が相次いで寄せられていました。実際に居室を確認すると、梁の下や外壁側の壁面、天井などに点状のカビが広がっている部屋があり、清掃を行っても時間が経つと再び発生するという状態が続いていました。

カビは見た目の問題にとどまりません。学生が長期間にわたって寝起きする居室で空気中のカビを吸い込み続ければ、アレルギーや呼吸器への影響といった健康リスクにつながります。寮を管理するご担当者様には入居者の生活環境を守る責任がある一方、「建物に原因があるのか」「学生の生活習慣によるものなのか」が分からないままでは、どこに手を打てばよいのか判断できませんでした。

また、国立大学という公的機関の性質上、対策に予算を投じるには「なぜその対策が必要なのか」「どの範囲まで行うのか」を客観的な根拠をもって説明する必要があります。感覚的な見立てではなく、数値と写真に基づいて原因を切り分けたうえで、対策の優先順位を整理したい。そうしたご意向のもと、弊社にカビ発生原因調査のご依頼をいただきました。

今回案件のポイント

学生寮の壁面で含水率計を用いて水分量を測定している様子

本件の最大のポイントは、「カビ=掃除不足」「カビ=建物の欠陥」といった単純な結論に飛びつかず、浮遊菌検査と含水率測定という性質の異なる2つの数値を突き合わせることで、カビの原因を「外気侵入による結露」「換気バランスの乱れ」「生活習慣」の3つが重なった複合要因であると切り分けた点にあります。

浮遊菌検査では、同じ建物でもフロアや部屋の位置によって10〜103CFU/100Lと10倍以上の差があり、建物全体が一様に汚染されているわけではないことが分かりました。一方、含水率測定では、多くの部屋が1.2〜1.8%と安定しているなかで、エアコン配管の貫通部まわりや梁の下など一部の箇所だけが2〜3%と高い値を示していました。そして、含水率の高い箇所ほど黒カビや放線菌が多く確認されるという明確な相関が見られたのです。

この2つの数値から、「外から入り込む湿気」と「室内にこもる湿気」がぶつかる場所で結露が繰り返され、カビが育っているという発生の仕組みが見えてきました。原因が複合的である以上、対策も一つではありません。建物側の是正(すき間のコーキング、断熱補強、換気バランスの調整)と、運用面の改善(家具配置の見直し、除湿機の設置、換気の習慣化)を切り分けて整理し、それぞれの優先度をご提示しました。

もう一つのポイントは、調査結果を「専門家にしか分からない報告」で終わらせなかったことです。測定値や培養プレートの写真、判定基準の根拠(文部科学省カビ対策専門家会合報告書)を一つの資料にまとめ、学内の関係部署への説明や、入居する学生への生活上の注意喚起にそのまま活用いただける形で納品しています。

依頼から調査/報告完了までの流れ

ご依頼をいただいてから現地調査、報告書の納品までの主な流れは以下のとおりです。

調査の実施

学生寮の居室でエアサンプラーを設置し浮遊菌検査を実施している様子

  1. 現地確認とヒアリング
    ご担当者様から相談の多い居室や発生箇所を伺ったうえで、6階建ての建物の各フロアで居室・共用部を目視で確認。梁の下や外壁側の壁面、天井などに点状のカビが広がっている箇所を写真で記録しました。現地調査は1日で実施し、各フロアから選んだ10部屋を対象に測定を行っています。
  2. 浮遊菌検査(空気中のカビの「見える化」)
    建物全体の空気環境を把握するため、各フロアの居室でエアサンプラーを用いて空気中のカビを捕集し、培養しました。カビの量は「CFU(コロニー形成単位)」という数値で表され、数値が高いほど空気中にカビが多いことを意味します。
  3. 含水率測定(壁内部の結露のサインを探る)
    壁や天井の内部に含まれる水分量を含水率計で測定しました。見た目は乾いていても内部に水分が残っていればカビは再発するため、外壁側・梁の下・家具の裏・配管の貫通部など、条件の異なる箇所を比較しています。
  4. 菌種の確認
    捕集したサンプルを培養し、コロニーの形状や色から菌の種類を確認しました。今回確認されたのはアスペルギルス属(青カビ)・クラドスポリウム属(黒カビ)・放線菌の3種類です。アスペルギルス属は胞子が空気中に漂いやすく、鼻炎や喘息などのアレルギー症状を悪化させることがあります。クラドスポリウム属は湿気に強く、壁紙の裏や結露しやすい場所で繁殖しやすい菌です。放線菌はカビに似た細菌で高湿環境を好み、日本では「夏型過敏性肺炎」の原因菌としても知られています。

浮遊菌の判定には、文部科学省カビ対策専門家会合報告書を参考にした以下の基準を用いています。100CFU/100Lを超える値は、カビ繁殖リスクが高いと判断されます。

測定項目清潔区域準清潔区域準汚染区域汚染区域
浮遊カビ数(CFU/100L)5以下20以下21〜99100以上

カビの発生が少なかった部屋の培養プレート(10CFU/100L)

カビの発生が少なかった部屋の培養プレート(10CFU/100L)

カビが多く検出された部屋の培養プレート(103CFU/100L)

カビが多く検出された部屋の培養プレート(103CFU/100L)

調査結果の考察と対策のご提案

  1. 汚染状況の評価
    浮遊菌は10〜103CFU/100Lの範囲で確認され、同じ建物でも部屋によって大きな差がありました。特に2階で高い値が見られ、放線菌が多く含まれている可能性がありました。カビの少ない部屋では培養プレート上の菌はわずかでしたが、カビの多い部屋では多数のコロニーが形成され、目に見えない胞子が空気中に多く漂っていることが分かりました。換気の流れや湿気のたまり方など、部屋ごとの環境条件がカビの発生に影響していると評価しています。
  2. 結露箇所の特定
    含水率は多くの部屋で1.2〜1.8%と安定していた一方、一部で2〜3%の高い値を確認しました。外壁側や梁の下など温度差の大きい場所、家具の裏や角など風が通りにくい場所、エアコン配管の貫通部まわりで高含水の傾向が見られ、含水率の高い場所ほど黒カビや放線菌が多いという関係が確認できました。内部に湿気が残り、乾きにくい状態がカビの栄養源になっていたと考えられます。
  3. 原因の考察
    以上の結果から、カビの原因は次の3つが重なった複合要因であると考察しました。
    ①外気侵入と結露の繰り返し:外壁や窓まわりの気密性が十分でない部分から湿った外気が入り込み、冷えた壁面で結露が繰り返されていた
    ②換気の乱れと負圧:排気ばかりが強く給気が足りないため室内が負圧になり、外気の湿気を吸い込みやすい状態で「換気しているのに湿気が抜けない」現象が起きていた
    ③生活習慣による湿気の蓄積:家具を壁に密着させる、洗濯物を室内で干すといった日常の習慣で空気の流れが滞り、湿気がこもっていた
  4. 対策の提示と報告書の作成
    原因ごとに対策を整理し、建物側の是正として「エアコン配管や窓のすき間のコーキング補修」「冷えやすい部分への断熱材の追加」「給気と排気のバランス調整」を、運用面の改善として「家具を壁から離す配置の見直し」「室内干しの抑制」「クローゼットや梁下など湿気がたまりやすい場所への除湿機設置」をご提案しました。測定値・写真・判定基準をまとめた報告書として納品し、調査結果と対策の考え方については、ご担当者様にお電話で直接ご説明しました。

含水率3%を示したエアコン配管の貫通部まわり

含水率3%を示したエアコン配管の貫通部まわり

家具や洗濯物で空気の流れが滞りやすい居室の例

家具や洗濯物で空気の流れが滞りやすい学生寮の居室

得られた結果

学生寮の居室の天井に広がった点状のカビ

調査により、「どの部屋が」「なぜ」カビやすいのかを数値で説明できる状態になりました。浮遊菌10〜103CFU/100Lという濃淡と、含水率1.2〜1.8%/2〜3%の差は、「なんとなくカビ臭い」という感覚を客観的なデータに置き換えるものです。

原因が「外気侵入・換気の不均衡・生活習慣」の複合要因であると特定できたことで、建物全体の大規模改修に踏み切る前に、コーキングや断熱補強といった局所的な是正と運用改善から着手するという、過不足のない方針を整理できました。

また、検出された菌種(アスペルギルス属・クラドスポリウム属・放線菌)と健康リスクを明示したことで、学内で対策の必要性を説明する際や、入居する学生へ生活上の注意を促す際にも活用いただける根拠が整いました。

調査結果を受け、同大学では提示した対策方針に基づく是正工事が実施されました。「原因を切り分けたうえで、必要な箇所に絞って手を打つ」という流れが、そのまま実行に移された形です。

今回案件で発揮できたハーツリッチの強み

1:「建物」と「暮らし」を切り分け、カビが発生する仕組みを数値で説明した

カビが繰り返す建物では、「掃除が足りない」「建物が古い」といった見立てが先行しがちです。しかし、原因の切り分けを誤ったまま対策を行っても、カビは再発します。

弊社は、空気中のカビ量(浮遊菌検査)と壁内部の水分量(含水率測定)という性質の異なる2つの数値を突き合わせ、「含水率の高い箇所ほどカビが多い」という相関を示しました。そのうえで、結露を生む外気侵入、湿気を抜けなくする換気の負圧、湿気をためる生活習慣という3つの要因がどのように重なっているかを整理しています。

「カビは掃除不足だけで発生するものではない」。建物の構造、地域の気候、日々の暮らし方が重なって起きる現象であることを数値で示せたからこそ、同大学は対策の方向性に確信を持つことができました。

2:公的機関の説明責任に応える、誰が見ても分かる報告書を作成した

国立大学である同大学には、対策の要否や範囲を学内の関係部署に説明する責任があります。専門用語だけが並んだ報告では、予算や工事の判断材料にはなりません。

そこで弊社は、部屋ごとの測定値や培養プレートの写真、文部科学省の報告書を参考にした判定基準、高含水箇所の写真といった根拠を一つの資料にまとめ、専門知識がない方でも「どこが」「なぜ」問題なのかを把握できる形に整理しました。納品後はお電話でも内容をご説明し、疑問点をその場で解消いただいています。

この資料は、学内の合意形成だけでなく、入居する学生への注意喚起にも活用できます。多国籍の学生が入れ替わりながら生活する寮だからこそ、根拠のある説明資料が運用の土台になると考えています。

3:大規模改修ありきにせず、優先順位をつけた過不足のない対策を提示した

建物の一部に高含水の箇所があるからといって、建物全体の改修が必要とは限りません。逆に、生活習慣の改善だけで済ませれば、結露を生む構造的な弱点は残ったままになります。

弊社は、建物側の是正(コーキング補修・断熱補強・換気バランスの調整)と運用面の改善(家具配置・室内干し・除湿機)を切り分け、それぞれの効果と優先度を整理した段階的な対策をご提示しました。「大きな工事をすれば安心」ではなく、「真因を突き止めて過不足なく対策する」。それが弊社の考えるカビ対策です。

特に高松市のように秋になっても湿度が高い地域では、カビが成長しやすい状態が長く続きます。掃除や換気に加えて、断熱性や気密性を高め、家具の配置を見直して空気を循環させる。構造と暮らしの両面から環境を整えることが、カビを「発生してから取る」のではなく「発生させない」建物への第一歩です。

代表 穂苅からのコメント

学生寮のように入居者が頻繁に入れ替わる建物では、「誰かの住み方が悪い」で片づけてしまいがちです。しかし今回、含水率の高い箇所ほどカビが多いという明確な相関が出たことで、建物の弱点と暮らし方の両方に原因があることを数値で示すことができました。原因が複合的だからこそ、対策は「全部やる」でも「何もしない」でもなく、優先順位をつけて過不足なく行うことが大切です。多くの学生が安心して生活できる環境づくりに、調査の数値が役立てば幸いです。

類似の支援事例

以下の類似支援事例も、ぜひ併せてご覧ください。

【施工事例】学校の寮で実施したカビ発生原因調査

宿舎の居室・共用部で発生したカビを調査

【詳細調査・施工】夏季に再発する宿泊施設のカビ原因を特定し、複雑な公共調達も完遂した調査・施工事例

学校・学生寮・宿泊施設で同じような課題を抱えている方は、ハーツリッチにご相談ください

ハーツリッチは、科学的根拠に基づいてカビの原因を切り分け、過不足のない対策を計画するカビ対策の総合専門会社です。

「掃除や換気をしてもカビが繰り返す」「建物の問題なのか生活習慣の問題なのか分からない」「公的機関として根拠をもって対策を説明したい」――本事例のように、客観的データに基づいて真因を見極め、優先順位をつけて対策したい方は、ハーツリッチで解決できる可能性が高いです。

無料調査や概算のお見積り、詳細な有料調査のご希望、その他のご相談・ご質問がある方は、お気軽にお問い合わせください。

関連サービス

他社では断られた内容、諦めていた内容、諦めず一度弊社までご相談ください。

マンガで知る
弊社の
創業ストーリー