事例の概要
引き渡し前の新築住宅でカビが発見され、施主様が抱いた不安を、多角的な科学的調査と分かりやすい説明で解消し、円滑な入居判断を後押しした事例です。
課題
- 壁の内部にカビが残存し、将来再発するリスクがあった
- 専門的な調査結果を、施主様ご自身では正しく評価できなかった
- 住宅会社の口頭説明だけでは、施主様の納得を得られなかった
成果
- 4つの観点から建物の状態が数値化され、客観的に記録された
- 専門的な検査結果が、施主様にも理解できる形で提示された
- 第三者の書面により、施主様が納得して入居を判断できた
抱えていた課題/依頼の背景

新築戸建住宅を施工した住宅会社様(以下、同社)より、引き渡しを控えた住宅に関するご相談をいただきました。構造躯体や木部にカビらしきものが見つかり、施主様が建物の安全性やご家族の健康への影響を懸念されているとのことでした。
施主様にとって、住宅は非常に大きな買い物です。その夢のマイホームにカビがあるかもしれないという事実は、目に見える部分だけでなく、壁の内部での増殖や将来的な再発リスクへの不安を掻き立てていたものとお察しします。専門的な検査項目や単位が多く、ご自身では状況を正しく評価できないことも、不安に拍車をかけていたようです。
同社としても、施主様の不安を解消するには、口頭での説明だけでは不十分だとお考えでした。そこで、第三者の専門家による客観的な調査報告書を作成し、科学的な根拠に基づいて建物の状態を説明することで、施主様にご納得いただいたうえで入居していただきたい。そうした思いから、弊社にご依頼をいただく運びとなりました。
今回案件のポイント
今回の調査で最も重要だったのは、「衛生環境は良好である」という結果を、いかに施主様にご納得いただける形で伝えるかという点にありました。
調査の結果、総合的には真菌汚染リスクが低く良好な状態と判断されましたが、付着菌検査の一部ではカビ(アスペルギルス)が検出されています。この「良好」という結論と「カビ検出」という事実をそのまま伝えれば、矛盾していると受け取られかねません。
そのため、検出の事実を隠さず報告書に記載したうえで、それが「現在、増殖・飛散している状態ではない」ことを、浮遊菌検査、ATPふき取り検査、含水率測定、現場写真という複数の異なる観点からのデータによって裏付ける構成としました。
また、専門的な数値をそのまま提示するのではなく、基準値と比較してどの程度の水準にあるのかを、生活者の方にも分かる言葉に置き換えてご説明することを徹底しました。単一の数値だけでは、説得力のある説明は成立しないからです。
依頼から診断完了までの流れ

ご依頼をいただいてから診断完了までの主な流れは、以下のとおりです。
- 現地調査(2026年1月21日)
新築住宅の構造躯体および木部を対象に、計5箇所で複数の手法を組み合わせた調査を行いました。 - 浮遊菌検査
居室にあたる3箇所の空間で、空気中に浮遊するカビの数を測定しました。結果は0〜2CFU/100Lで、基準値を大幅に下回る良好な状態でした。 - 付着菌検査
建物の梁(はり)2箇所から表面に付着している菌を採取し、菌の種類を確認しました。この検査で、一部からアスペルギルスが検出されています。 - ATPふき取り検査(表面汚染度測定)
建材表面の汚れの蓄積度合いを示す数値は75および173でした。この結果から、汚染の蓄積は見られないと判断しました。 - 含水率測定
木材の含水率は8.3〜9.4%の範囲であり、カビが増殖しやすいとされる湿った状態ではないことを確認しました。 - 現場写真の記録
各測定箇所の状況を写真で記録し、客観的な証拠として報告書に添付いたしました。 - 総合評価と報告書の提出
調査から2週間後、これら複数項目の結果を総合的に評価した報告書を提出しました。付着菌が確認された事実を明記しつつ、空気中への広がりや汚染の蓄積はなく、衛生環境は良好であると結論づけています。
得られた結果
構造躯体・木部の状態を、浮遊菌・付着菌・表面汚染度・含水率の4つの観点から数値化し、客観的な記録として残すことができました。
「良好」という結論と「カビ検出」という事実の関係性を整理し、施主様が納得できる形で報告書を提示しました。
住宅会社様の説明だけに依存しない第三者の書面が揃ったことで、施主様が入居を判断するための材料が整いました。あわせて、将来状況を確認する必要が生じた際に、引き渡し時点の状態を示す客観的な資料も整備できています。
今回案件で発揮できたハーツリッチの強み
1:複数の科学的データで「問題ない」の根拠を多角的に証明
一部でカビが検出されたという事実があり、単一の指標だけでは施主様の「本当に大丈夫なのか?」という不安を払拭できませんでした。
そこで弊社は、浮遊菌、付着菌、表面汚染度、含水率という4つの異なる観点から調査を実施しました。単に菌がいるかいないかだけでなく、「空気中に飛散していないか」「汚れとして蓄積していないか」「カビが増殖しやすい環境か」を個別に、科学的根拠に基づいて評価するアプローチです。
この多角的な調査により、「カビは存在するが、活動的ではなく、衛生環境は良好である」という結論に強い説得力を持たせることができました。施主様も断片的な情報に惑わされることなく、建物の状態を正しく理解することが可能になりました。
2:都合の悪い事実も開示し、将来の不信感を未然に防ぐ誠実な報告

施主様が懸念されていたのは、住宅会社様に都合の良い情報だけが伝えられることだったと考えられます。仮に「カビは一切ない」と報告しても、後から何か見つかれば、大きな不信感につながるリスクがあったのです。
弊社では、付着菌検査でアスペルギルスが確認された事実を隠すことなく、報告書に明記しました。そのうえで、他のデータを用いて「なぜ、それでも衛生環境は良好と言えるのか」を丁寧に解説。これは、目先の安心感よりも、長期的な信頼関係を重視する弊社の姿勢の表れです。
事実を正直に開示し、その意味づけを専門家の視点で行うことで、施主様は報告内容そのものへ高い信頼を寄せてくださったようです。後から疑問が生じる余地を残さない、透明性の高い情報提供が実現できました。
3:専門的な数値を「暮らしの言葉」に翻訳し、施主の判断を支援
CFUやATP値といった専門的な単位をそのまま伝えても、施主様がその意味を理解し、ご自身で状況を判断することは困難です。
そこで報告書では、各測定値が基準値と比較してどの程度の水準にあるのか、それが何を意味するのかを、生活者の方にも分かる平易な言葉で解説することを徹底しました。例えば、浮遊菌の数値が「基準値を大幅に下回る水準」であることなどを具体的に示しています。
これにより、施主様は専門的な検査結果を「自分ごと」として受け止め、納得感を持って次のステップである入居へと進む意思決定ができたとのことです。専門家と依頼者の間にある情報の壁を取り払うことが、真の安心につながると考えています。
代表 穂苅からのコメント
新築住宅でのカビ問題は、施主様にとって精神的なご負担が非常に大きいものです。今回の要点は、単に数値を報告するのではなく、その数値が持つ意味を「暮らしの安心」という文脈で丁寧にお伝えすることにありました。弊社の多角的な調査手法と、建築士としての知見があるからこそ、事実を客観的かつ分かりやすく整理し、ご納得いただける説明ができたのだと自負しております。施主様が安心して新しい生活をスタートできる一助となれたことを、心から嬉しく思います。
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新築住宅でのカビ問題は、施主様にとって精神的なご負担が非常に大きいものです。今回の要点は、単に数値を報告するのではなく、その数値が持つ意味を「暮らしの安心」という文脈で丁寧にお伝えすることにありました。弊社の多角的な調査手法と、建築士としての知見があるからこそ、事実を客観的かつ分かりやすく整理し、ご納得いただける説明ができたのだと自負しております。施主様が安心して新しい生活をスタートできる一助となれたことを、心から嬉しく思います。