事例の概要
ご家族の健康と訴訟の証拠保全という葛藤を抱えるお客様に対し、客観的なカビ調査で汚染状況を記録し、将来の除カビ工事と法的対応の両立を可能にした事例です。
課題
- 施工ミスによる雨漏りでカビが発生し、ご家族に健康被害が生じていた
- 家族の健康と、訴訟で必要な現場の証拠保全が両立できない状況だった
- 交渉が難航し、第三者による客観的なカビ汚染状況の証明が必要だった
成果
- 除カビ工事の前に、室内のカビ汚染状況を数値や写真で記録・保全した
- 弁護士の確認を経た調査報告書により、客観的な訴訟資料を確保できた
- 調査で事実が整理され、適切な除カビ工事の範囲を判断できるようになった

抱えていた課題/依頼の背景
ご相談いただいたのは、中古で購入された戸建住宅にお住まいのご依頼者様でした。お話を伺うと、以前行われた太陽光パネル工事での施工上の問題がきっかけで、ご家族全員に喘息の症状が現れ始めたとのことです。その後、浴室のリフォームで壁内を確認した際に、雨漏りの跡や深刻なカビ被害が発見されたそうです。
一級建築士からも壁内に残ったカビの除去と対策の必要性を指摘されていましたが、施工会社様との交渉は難航していました。補償をめぐる話し合いが長期化するなかで、ご家族の健康への不安は募るばかりだったとお察しいたします。
そうしたなか、お客様が直面されていたのは、「ご家族の健康を守るために一日も早くカビを取り除きたい」という切実な思いと、「除去すれば訴訟に必要な証拠が失われてしまう」という大きな葛藤でした。このジレンマを解決するため、弁護士様と相談のうえ、まずは第三者の専門家による客観的なカビ汚染状況の調査を行うことを決断されたのです。
法的対応を前提とした調査と報告書作成が可能な業者を探されるなかで、弊社にご相談をいただきました。初回の面談時には、すでにお客様ご自身で医師の診断書や建築士の見解書など多くの資料を揃えられており、問題解決に向けた真摯な思いが伝わってきました。
今回案件のポイント
本件の最大のポイントは、カビを「除去すること」そのものではなく、除去作業の前に「現時点での汚染状況を客観的な記録として確定させること」にありました。ご家族の健康と法的な証拠保全という二つの重要な目的を両立させるための、極めて重要な工程です。
そのためご相談の段階で、弊社が作成する報告書の役割を明確にお伝えしました。報告書はあくまで現地のカビ汚染状況や測定結果を客観的に整理するものであり、健康被害との医学的な因果関係や法的責任を直接判断するものではない、という点です。この事前のお約束が、結果として訴訟資料としての信頼性を高めることにつながりました。
また、すでにお客様側で雨漏り箇所の修繕と一部清掃が行われていた点も、調査の難易度を上げる要因でした。現時点で測定できる事実と、そこから過去の汚染状況について合理的に推測できる範囲を明確に切り分けて、報告書に記載する必要がありました。
さらに、壁内の断熱材などを調査するには壁の解体を伴います。建物の構造に影響を与えかねない作業であるため、壁の開口と復旧は施工業者様にご担当いただき、弊社は調査と記録に専念するという役割分担を明確にさせていただきました。
依頼から診断完了までの流れ
ご依頼をいただいてから診断完了までの主な流れは、以下のとおりです。
- 事前相談・調査設計
ご依頼者様の状況とご要望を詳細にヒアリングし、対応可能な調査項目をご提案しました。相手方から想定される反論(例:「結露が原因」など)も踏まえ、屋外の空気と比較する調査方法を設定するなど、法的な利用を前提とした調査計画を策定しました。 - 診断の実施
2026年5月27日に現地へ伺い、浴室・洗面所周辺を中心に空気環境調査(空気中に浮遊するカビの胞子量を測定する調査)および汚染度測定を実施しました。どの場所で何を測定したかを後から正確に追跡できるよう、調査箇所や測定値を間取り図と照合しながら慎重に記録を進めました。 - 報告書の作成・提出
現地調査で得られた測定結果、写真、間取り図などを整理し、客観的な事実に基づいた調査報告書を作成・納品いたしました。その後、ご依頼者様と代理人弁護士様にご確認いただき、法的な資料として齟齬がないよう表現や図面を修正して、調査業務を完了させました。
得られた結果
除カビ工事の前段階で、室内のカビ汚染状況を数値・写真・図面として保全し、健康面の対応と証拠保全の両立を実現しました。
代理人弁護士様の確認を経た調査報告書を整備したことで、訴訟準備における客観的な資料としての活用が可能になりました。
また、調査によって分かることと分からないことが明確になり、今後の除カビ工事の必要性や範囲を判断するための材料が整いました。
ご依頼後、ご依頼者様より以下のメッセージを頂戴しました。
「家族の健康を考えると一刻も早くカビを除去したい、でも裁判のことを考えると証拠を消すわけにはいかない、と八方塞がりの気持ちでした。そんな気持ちを汲み、細かい質問にも丁寧にお答えいただき、本当にありがとうございました。カビは奥が深く、とても勉強になりました。」
今回案件で発揮できたハーツリッチの強み
1:健康と証拠保全の葛藤を解消する、除去前のカビ汚染状況の記録

ご依頼者様は「ご家族の健康のために早くカビを除去したい」という思いと、「訴訟の証拠を保全したい」という二つの選択肢の間で深く悩まれていました。
そこで弊社では、除カビ工事の前に現状の汚染度を客観的なデータとして記録・保全する調査計画をご提案しました。修繕や清掃が一部行われた後という難しい状況でしたが、現時点で測定できる事実と、そこから合理的に説明できる範囲を慎重に見極める調査です。測定値、写真、図面といった形で、除去によって失われてしまう重要な情報を動かぬ証拠として残すことを目指しました。
このご提案により、お客様は証拠を失う心配をすることなく、ご家族の健康を守るための次のステップ(除カビ工事)を検討できるようになりました。焦りと不安のなかで見えなかった道筋が、明確になった瞬間でした。
2:弁護士と連携し、訴訟資料の信頼性を高める客観的な報告書作成
法的な場で使用する資料には、誰が見ても事実関係を誤解なく追える、極めて高い客観性と正確性が求められます。
弊社ではご相談の当初から、報告書で証明できる範囲とできない範囲を明確にご説明しました。建物内のカビ汚染状況の記録に徹し、健康被害との医学的・法的な因果関係の立証といった専門外の領域には踏み込まない姿勢を貫いています。この方針のもと、調査箇所・測定値・撮影位置が一つひとつ対応関係をもって確認できる報告書を作成しました。さらに納品後も、ご依頼者様と代理人弁護士様からのご指摘を反映して表現や図面を修正し、資料間の矛盾を徹底的に解消しました。
その結果、医師の診断書など他の専門家資料と役割が明確に分かれた客観的な資料が完成し、お客様は安心して訴訟準備を進められる状態になりました。専門家としての誠実な姿勢が、ご依頼者様の信頼につながったと自負しております。
代表 穂苅からのコメント
ご家族の健康を想う切実なお気持ちと、法的な証拠を残さなければならないという状況。この板挟みこそが、本件で最も解決すべき課題でした。弊社の調査が単なる数値の報告に終わらず、お客様が安心して次のステップへ進むための道筋を示すことができたのであれば、これほど嬉しいことはありません。
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